何より重要なのは事実をもとに適切に対処すること

諸外国もインフレ対策を誤ればスタグフレーションに陥る可能性は十分にありますが、そもそも不景気が続いている日本の場合、特にスタグフレーションのリスクが高いと言わざるを得ません。

つまり日本経済は、恒常的な不景気に物価上昇が加わるという最悪の事態に陥る可能性が十分に考えられるのです。

日本は過去30年にわたってデフレが続いていましたから、多くの人がインフレというものの現実についてよく理解していません。これまでの時代は、デフレさえ脱却すれば日本経済が鮮やかに復活するという安易な主張をよく耳にしましたが、インフレはそのような生やさしいものではありません。

いったん、制御できないインフレが始まってしまうと、国民生活にはきわめて大きなダメージが及びます。

インフレは多くの人にとってきわめてやっかいな出来事であり、対策も限られてきます。しかし過去にもインフレは発生しており、多くの人が知恵を絞って乗り越えてきた歴史があります。

何より重要なのは、イメージや噂に惑わされることなく、事実をもとに適切に対処すること。それしかありません。

※本稿は、『スタグフレーション――生活を直撃する経済危機』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです。


スタグフレーション――生活を直撃する経済危機』(著:加谷珪一/祥伝社新書)

2022年に入り、多くの商品で値上げが続いておりインフレの様相を呈している。専門家の多くが「デフレ」を大合唱していた数年前から、現今の情勢を予測・発表してきた著者は、円安という特殊要因が加わる日本ではさらに厳しくなり、不況下のインフレ、すなわちスタグフレーションに陥る可能性がきわめて高いと言う。賃金が上がらず、物価だけが上昇する状況では、もはや単純な節約では乗り切れない。これまでとは異なる対処法が求められる。スタグフレーション時代にいかにして生活を守るか。国際経済の動きとも絡めて、説明する。