70歳になる夫は、巨体をフルに動かして、朝の仕事を終えると速攻で帰宅し、昼食作りをしてくれる(写真はイメージ。写真提供:photoAC)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは岐阜県の60代の女性からのお便り。仕事を辞めた後夫婦二人分の昼食を用意してくれていた夫が、また朝夕の仕事を始めたそうで――。

年金夫婦の共働き

「二度と働かない!」。3年前に退職したとき、きっぱりと宣言した夫が、70歳目前で朝と夕方の仕事を見つけて働きだした。理由を聞くと、「夫の必要経費」として私が年金から渡していた金額では足りないからだと言う。

足りないと言われても、そもそも年金だけでは暮らせないので、貯蓄を取り崩しての生活になったのだからしかたないではないか。私は自分の必要経費を賄うために、いままでずっと働き続けている。

退職後の約3年、ずっと家にいた夫が夫婦二人の昼食の支度をしてくれていたので、今後はどうなるのだろうと心配になった。すると、何事も《自分のやることに文句は言わせない》主義の夫が懸念を吹き飛ばしてくれた。

毎日、巨体をフルに動かして、朝の仕事を終えると昼食作りのために速攻で帰宅。「ざるそばには必ず天ぷらを添えなければならない」と思い込んでいた夫だったが、仕事後に揚げ物をするのは面倒だったらしく、卵焼きと切ったトマトとキュウリに変わった。それで十分だ。

と言うのも、肉体労働で疲れて帰った私にとっては、夫の「凝った料理」は胃に重たかった。せっかくだから食べなければ悪いと思い、頑張って食べていたのだ。だから、ただ切っただけのシンプルな生野菜がおいしく、ありがたい。

若い頃の共稼ぎは、生活がかかっているという重圧があったので、年金生活になったらのんびりしたいと夢見ていた。でも、のんびりだけだと飽きてしまう。私は、体がきつくても働いてお給料をいただき、「ありがとう」と感謝されることに充実感を覚えるのだ。夫も、家にいた頃よりもいきいきしている。

先日、夫は無事に古希を迎えた。70代前後の二人、体力に応じて働くことが、ちょっと新鮮で楽しい毎日である。


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