日本に騎馬軍団が存在したことは確実

ところで、日本の騎馬については近年、「ポニーのように小型だったので、甲冑武者を乗せての突撃などは不可能で、軍記物で伝えられるような騎馬軍団は存在しなかった」とする説をよく目にします。

しかし日本の伝統的な木曾馬の先祖は蒙古馬で、中型馬ですから、ポニーほど小さくはありませんでした。

馬の体重は馬の背の高さの3乗に比例するので、馬の背の高さが1.2メートルのポニーと1.3〜1.4メートルの蒙古馬では体重が(1.35/1.2)の3乗 ≒1.42倍も違います。また、戦いに用いられたのは雄馬ですが、日本には去勢の習慣がなかったので、体力も十分にありました。

そのほか、蹄鉄がなかったので騎乗は無理だったという説もありますが、日本は地質的に硬い道路がほとんどなく、畑や田んぼなどの軟らかい道が多いので、問題はなかったと思われます。木曾馬はひづめが張っていて、山道でも滑らない形状をしています。

蒙古軍を迎え撃つ日本側の騎馬武者。『蒙古襲来絵巻・模本』(作:雅信、雅紹、養福、養道、会心法印、雅熈、養實模。東京国立博物館所蔵)より。colbase

日本馬と同じサイズの蒙古馬は大陸を駆け、最強騎馬軍団を生みだしました。日本でも『蒙古襲来絵詞(えことば)』などの絵画には、騎馬武者が多数突進しているさまが描かれています。

これらがすべてフィクションであったとは考えにくいので、騎馬軍団が存在したことは確実と思われます。