「物事は全て自分で決めなさい」という教え
タキさんは一人っ子でお父様が53歳、お母様が48歳の時に生まれている。ご両親は1890年代の生まれだというから驚く(編集部注 父は元国会議員の加藤勘十さん、母は社会運動家で元国会議員の加藤シズエさん)。タキさんがおっしゃるには、ご両親はタキさんが幼い頃から、いつ自分達が他界するかわからないからと、「物事は全て自分で決めなさい」という教えだったそうだ。なにひとつ、こうしなさい、と言われたことはなく、やめなさい、と言われたことも、ないそうだ。
「タキさん、それ、凄いですね。なにも?言われてこなかったんですか?」
「そう。うちの母は、兎に角早いうちに挫折しなさいって。転んで転んで、若かったら立ち上がれるからって。親が転ばないようにすると、大人になって初めて挫折してしまう、そうすると立ち上がるのに時間がかかるから。それに挫折を体験している人は、人の気持ちを理解できる優しく強い人間になれるからって」
わたしは母に「こうしなさい」と「こうしてはいけません」しか言われてこなかった気がするが(笑)、ああ、それも今は笑いながら話せるようになっていることに気づく。母を憎んでいた頃は、人が母親とのエピソードなど話しているのを聞くと耳を塞ぎたくなったものだ。随分ラクになったものだ。