「僕自身、家に橙利(三男)がいると思うと頑張れたところもある。もし一人だったら耐えられなかったかも」と語る大久保嘉人さん。右は妻の莉瑛さん(撮影:藤澤靖子)
11月22日は「いい夫婦の日」です。1988年に、財団法人余暇開発センター〈現・公益財団法人 日本生産性本部〉により提唱されて以降、今では幅広く認知されており、この日に合わせて婚姻届けを出す方も。一方で、婚姻率(人口1000人当たりの婚姻件数)は年々下がっており、2019年の値は4.8と、1970年代前半と比較し半分程度になっています。結婚に関する悩みはつきものですが、その中で幸せを築いている方も多くいます。元プロサッカー選手の大久保嘉人さんもその1人。今回、フジテレビで放送される『FIFAワールドカップカタール2022』のスペシャルナビゲーターとして、現地に赴いている大久保さん。現役引退後も活躍される中で、妻の莉瑛さんと家庭のことについて語り合った『婦人公論』2022年4月号の対談記事を再配信します。


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W杯やオリンピックで活躍し、Jリーグでは史上初の3年連続得点王に輝いた大久保嘉人さん。2021年に現役を引退、4月からはスポーツ番組のMCを務める大久保さんですが、現役時には、当時小4だった息子と一緒に単身赴任をしています。濃密だったその期間を振り返りつつ、自身の子育て論を妻の莉瑛さんと語り合いました。ベテランストライカーである嘉人さんが家事を始めたことで、ほかのJリーガーからはブーイングもあったそうで―ー。(構成=吉井妙子 撮影=藤澤靖子)

「パパと一緒に行く」三男、突然の決意表明

嘉人 今までスペインやドイツ、神戸などいろんな場所でプレーしてきたけど、いつも家族が一緒。だから、昨年セレッソ大阪に移籍して大阪に住んだのが、初めての「単身赴任」だった。

莉瑛 うちは、長男の碧人(あいと)が高1、次男の緑二(りょくじ)が小6、三男の橙利(とうり)が小4、そして四男の紫由(しゆう)が年中という4人兄弟。ついていきたかったけど、子どもたちの学校やサッカースクールの関係もあったので難しかった。すると、夫が「オレ、一人で行くよ」って。

嘉人 でもまさか、橙利が「僕も行く」と言い出すとは思わなかった。

莉瑛 みんなで驚いたね。転校するとはどういうことか言い聞かせても、「パパと一緒に行く」と決意は固い。夫も「ああ、いいよ」と言うので、心配だったけど送り出すしかなくて。

嘉人 橙利はすぐに大阪になじんだみたい。転校してまもなく友達を家に連れてくるようになったし。横浜の家では何もしない子どもだったのに、洗濯物を干したり、スーパーの買い出しに一緒に行ってくれたり、結構手伝ってくれた。僕自身、家に橙利がいると思うと頑張れたところもある。もし一人だったら耐えられなかったかも。

莉瑛 父子2人の生活をSNSに上げたら、メディアで取り上げられるようになって、今回単行本にもなった。

嘉人 皆さん、びっくりしたみたい。猪突猛進型のプレーでイエローカードをもらいまくっていた僕が、まさか家事をやり、子育てをしつつ、キャラ弁まで作るなんてね。