正月は勝手にくるものではなく、準備したところへくる

玄関だけに掛ける方もいれば、「輪飾り」系の小さなサイズのものを愛車などに飾る方もいるでしょう。精麦工場を営んでいた父の実家では、工場内のボイラー、仕事で使う電話器やオート三輪にしめかざりを飾っていました。

正岡子規の短歌にも「枕べの寒さ計りに新年の年ほぎ縄を掛けてほぐかも」というものがあり、病床にありながら寒暖計にしめかざりをつけて新年を祝う様子が詠まれています。玄関や神棚だけでなく、その人にとって大切なものや場所、つまり一年の感謝の思いを伝えたいところに飾るのでしょう。

消えそうと言われながら、それでも消えずに続いてきた――。そこに私はしめかざりという文化の面白さがあるように思います。習慣でなんとなく飾ってきたという人であっても、そこにはゆく年への感謝や、新年を前に心の節目を作りたいという思いがあるのではないでしょうか。正月は勝手にくるものではなく、準備したところへくるのだなあ、と思わずにはいられません。

機会があれば、しめかざりのかたちにも目を向けてみてはいかがでしょう。新年を迎えるため、人びとが受け継いできた「思い」が伝わってくるかもしれません。