若く美しい2人のウエディングドレスの写真

「思い出ボックス」なるものにアルバムや小学校時代の日記が入っており、久しぶりに開いて確認。

すると、驚いた。15年前、結婚した時に撮っていただいた、ウエディングドレスの写真。若く美しい2人が幸せそうにしている。こんな写真を撮ったことも、残していたことも忘れていた。

その写真を見た時の感想は「あーこんな時もあったなぁ」なんて感じで、離婚後10年経ち、傷は癒えたのだなあと思った。あの頃は、「こんな写真見られない!」と、思ったはずだから。やはり時間が忘れさせてくれることもあるのか。

納戸の中にあった思い出ボックス

懐かしいなぁと感慨に耽っていると、ひでこさん
「綺麗ね、この写真」
「そうですね。でも、今のわたしはいらないかなあ」
「うん。そうね」
「ひでこさん、差し上げましょうか?」
「いらないわよ!」
やっぱり。
「じゃあ、娘に渡そうかなぁ」
「娘さんも困るんじゃない?」

そうかもしれませんねえ、ははは、と笑いながら、ふと考える。
離婚後のウエディングドレスの写真て、皆さんどうしてるんだろう。
なんとなく断捨離する決断ができない。
未練があるとかでなくて、恋愛している時の笑顔は、とてもいいし、わたしの両親も離婚しているのだが、離婚後に書庫から見つけた母の昔のアルバムに、父と母の結婚の時の写真を見つけた時、とても嬉しかったのだ。

20代前半の母は、美しかったし、父は若く髪は七三分け、黒縁の太いメガネをかけて、何か強い意志がありそうで、カッコよくみえた。なにより、離婚はしたけれど、かつて2人は愛し合っていた時が確かにあって、だからわたしが生まれたんだなと思えた。写真は、動画より、瞬間の感情がギュッと詰まっていると思う。隠しきれないものが、詰まっていると思う。

わたしは娘に聞いた。

「これ、いりますか?」
「え?」

娘は両親の写真を見た。
「いらない」

「え、なんで?仲良しでいい写真でしょう」
「離婚してんじゃん」

「・・・・・」
まあ、そうなのだが、いったん本棚に置いておくことにするか!

 

本連載から生まれた青木さんの著書『母』