「月曜夜は街中からOLが消えた」

『東ラブ』が放送されていた時間帯は、毎週月曜21時=「月9」だ。「げつく」。この言葉の響きだけで蘇ってくる、生温かさはないだろうか。自分が好きだったタイトル、放送翌日に仲間たちと交わす、作品の感想。

まだブラウン管のテレビから発信される情報源が最先端だったころ、圧倒的な人気を誇っていた「月9」。年収や容姿、性別なんてまったく関係がない。とにかく「月9」を見ていないと、火曜日の同僚や同級生との話題に乗り遅れてしまう。会社や学校で、ぼっちにされてしまうのだから、視聴する以外に選択はないという、心躍る強制だった。

『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(著:小林久乃/青春出版社)

そんな月9の人気が上昇し始めたのは、1990年代からと記憶している。平成に放送された「月9」の平均視聴率はざっと、20〜30%。ドラマに出てくる、ファッションやインテリアに憧れて、上京する若者も後をたたなかった。実際、ドラマに出てくるような部屋には予算オーバーで住めなかったけれど……。

「月曜夜は街中からOLが消えた」と、各所で噂されているのは、あながち嘘ではない。わたしも、10〜20代の青春期を「月9」とともに過ごしていたひとりで、月曜夜だけは在宅率が高かった。

ムーブメントを築き上げた「月9」。男女の色恋沙汰が、若者のステイタスだった1990年代。需要に応えるように、ラブストーリーが多く放送されているイメージがあった。「月9=恋愛モノ」。でもその裏で、実は多種多様なジャンルを制作していた……というのが、わたしの思うこの放送枠の醍醐味だ。