振り込みをしたとメールを入れても…
それからほどなくして、40歳近かった兄が見合い結婚することに。義姉になるという女性に会った時、律子さんはイヤな予感がしたという。
「地味で冴えないタイプの兄に対して、服装や化粧品に気合が入っている女性。父が兄の結婚を強く望んで、お見合いから3ヵ月で決めたというのも不安材料でした」
案の定、義姉は結婚前から100万円単位の借金があった。結婚当初は、兄も自分の店に借金があるのを隠していた。何とか生計を立てていかなくてはならない兄は、当然のように律子さんに助けを求め続けた。
「しまいには、実家から電話がかかってくるのが怖くなりましたね。最終的に10年以上、私はボーナスを1円も自分のために使いませんでした。今でも腹に据えかねるのですが、振り込みをしたとメールを入れても、兄からはお礼どころか返信さえ来たためしがなかった」
結局、律子さんが強く進言し、店をたたむことに。兄はすでに離婚し、子どもは義姉が引き取っていた。
それからというもの、兄は母と暮らす律子さんのもとに、なぜか毎月米を送ってくる。母に小遣いも渡しているらしい。そして時折メールが届く。「お母さんにあまり家の仕事をさせるな」。一方的なダメ出しや空気を読まない要求が多く、律子さんは毎回イラッとさせられる。
「そういう時には夫に携帯電話の画面を見せて、二人でフンガイするんです。スルーしちゃえよ、と夫に言われると少し溜飲が下がります」
律子さんにとって気がかりなのは、80代後半の母の介護がそろそろ本格的に始まることだ。兄は口だけ出してくるに違いない。さらに自分の子どもと交流がない兄本人の老後はどうするのか。そう遠くない未来を考えては、ため息が出るばかりだ。