「少し間をあけましょう」

九重 私は、毎日とにかく忙しくて忙しくて、いつもスケジュールに追われていました。一生懸命目の前のことをこなすだけで精一杯。スタジオでは生放送なのに、渥美清さんがカメラに映らないところから笑わせにきたりして。そしたらセリフがぽーんと飛んじゃったり。

田辺 確かに、テレビ創世記は出演者もスタッフも家族的で、アットホームな雰囲気だったね。

九重 だから特別に誰かと付き合うという感覚なんてまったくなかったんです。
休みにお互いの家に行くようにはなって。気が付いたら田辺さんの部屋の天井に私のポスターが貼ってあるんですよ(笑)。ベッドに寝ながら眺めてたのね。

田辺 だからどうこうしようってわけじゃないんですよ。ただ、好きだと思っていただけ。かわいいもんでしょ?(笑)

九重 それでも毎日のように顔を合わせているし、いつも一緒にいるもんだから、周りからは「あの二人はいずれ結婚するんだろう」という目で見られるようになっちゃってね。おとうさん(森繫久彌さん)にも「お前たちはいずれ一緒になるんだ」と言われ続けてました。

田辺 ところが、ですよ! なんとなく機が熟してきたと周りが感じ始めたころ、いきなり僕が一方的にふられたんです。「少し間をあけましょう」って。