最初から夢中になっちゃいました

田辺 最初に会ったとき、彼女は無愛想で。変わった子だなと思いましたね。

九重 そういうふうにしろって言われてたから。

田辺 でもね、僕、変わった子がタイプだったんですよ。だから最初から夢中になっちゃいました。これが僕の人生の分かれ道。(笑)

九重 そのころは、番組のリハーサルと本番で、毎日のように会うんですよ。
年も近いから話しやすくて、私はけっこう頼りにしていました。

田辺 森繁久彌さんのドラマでも一緒になって、二人で父親役の森繁さんを「おとうさん」と呼ぶようになった。

リフォーム前は田辺さんの部屋だったというリビングで

九重 私たちが森繁さんの子ども、兄と妹の役だったんです。「ねえねえ、田辺さん、こんな時、男の人ならどう考えるの?」なんて演技の相談もしていました。

田辺さんは、梓みちよさんとのデュエット曲「ヘイ・ポーラ」が大ヒット。俳優業にも幅を広げ、芸能界での確固たる地位を獲得。佑三子さんも、主演ドラマの『コメットさん』が一世を風靡し、自宅の前にもファンが待っているほどお茶の間の人気者になっていた。

田辺 僕たちは二人とも東京の出身で、いつのまにかデビューしていつのまにかテレビに出るようになっていた。地方から出てきて「故郷に錦を飾るぞ」というハングリー精神もない。特に僕はもともとガツガツと仕事をするタイプではないので、いつも周りから「やっちんはやる気があるのかい?」なんて言われてましたね。