なんてこともなく隣にまたいられました

九重 20代になってこのままいけば結婚してしまいそうになっていたけど、これが本当に恋愛なの?って疑問に感じてしまって…。だってデートもしたことがないんですよ! 会うのはスタジオかどちらかの家。恋愛が何かもわかっていなくて、お尻の青い者同士が一緒になっても、そのうちうまくいかなくなるような気がしたんです。いったん距離をおいて、広い世界を見たかった。

田辺 こっちは青天の霹靂ですよ。周りにも認められ、世田谷のこの家から上野のこの人の実家にもしょっちゅう行ってたのに…。

九重 そうそう。私が過労で倒れると、いつも私は「田辺さん呼んで!」と家族に言ってた。

お互いが話すときは横顔を見つめて

田辺 そのたびに世田谷から上野ですよ。(笑)

九重 歩けない私を抱えてトイレに連れていき、トイレットペーパーを巻いて渡してくれて。ドアを閉めて「ここで待ってるからね」と。

田辺 それがいきなり「別れましょう」ですよ。「悪魔のように冷たい女」だと思いました。(笑)

九重 そうやって、距離をおいてから4年ぐらい経ったころ、万博がらみのイベントの話があったんです。台本を見たら「田辺靖雄」って書いてある。それを見たとき「ドッキーン」として…。会える、田辺さんに会える、って興奮している自分にびっくりでした。なんだろう、この気持ちって…。

田辺 久しぶりの再会は覚えてるよ。ドラマチックなんてとんでもない。お互いに昨日の続きみたいに「オス!」って軽く挨拶しただけ。

九重 空白があったことが信じられないぐらい、なんてこともなく隣にまたいられました。

田辺 会ってない時期、僕もいろいろあったけど長続きしなかった。ここで彼女と付き合いが始まったらいよいよ次は結婚だと、ようやく意識することができたんです。やっぱり二人にとって、この空白期間は必要だったのかもしれないと今なら思えますが、とにかくふりまわされっぱなしですよ。そのたびにやせたり太ったり…(笑)。もうふりまわされない自信ができたから、結婚しようと。

後編に続く