芸能界きってのおしどり夫婦として知られた妻の榊原郁恵さんは自身のInstagramで〈お別れ…と言うか又改めて、渡辺徹を思い出して頂き花を添えて頂ければ嬉しいです〉とお別れの会を告知しています。
徹さんと郁恵さんはどんな夫婦だったのでしょうか。文学座研究所時代の同期で長年の友人でもある女優・小川菜摘さんと、それぞれの夫婦観について語り合った対談記事(『婦人公論』2020年11月24日号掲載)を再配信します。
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ダウンタウンの浜田雅功さんと結婚生活31年の小川菜摘さん。女優の榊原郁恵さんと結婚生活33年の渡辺徹さん。文学座附属演劇研究所時代の同期で、おうちもご近所、長年の友人であるお二人の、「家族とうまくつきあうコツ」「夫や妻にイライラしたときの対処法」とは?(構成=福永妙子 撮影=大河内禎)
ステイホーム中に家族が揃って
渡辺 こうして、あらたまって面と向かって話すのって、照れくさいよね。何しろ、10代の頃からのつきあいだから。あれから40年、おじさんとおばさんになりました。
小川 示しあわせたわけでもないのに、住むところが近くて、子どもが男2人というのも同じ。息子たちは幼稚園、小学校も同じで、学年は違うけど、待ち合わせて一緒のバスで通ってたのよね。
渡辺 互いの家庭の様子も、子どもを通じて手に取るようにわかる。
小川 子どもはいらんことをベラベラしゃべるのよ。(笑)
渡辺 ずっとご縁が切れずに……腐れ縁だよね。
小川 コロナによる非常事態宣言中は、「頑張ろう自粛!」のメッセージとともに、渡辺家から美味しい鶏肉を送っていただいて。気分が落ち込みがちになる頃だから、心遣いがすごく嬉しかった。
渡辺 大変な日々だったよね。俺は大きな舞台が3本、中止に。
小川 私も大きな舞台が2本、飛びました。
渡辺 菜摘はこのところ、舞台をたくさんやっているよね。
小川 子育てとか、家のことをキッチリやりたかったので、26年間ずっと舞台はお休みしてた。50歳で復帰して、今、57歳。あとどのくらいやれるかわからないけれど、できる限り多く舞台に立ちたいの。それにしても、舞台が中止になるって、役者としてはつらいよね。
渡辺 そして、いきなりたっぷり時間ができた。ひとり暮らしをしている長男の裕太も帰ってきたり。家族旅行とかは別にして、毎日、全員がこれだけ揃ってるって、ないことだよ。みんな、家のそこいらにあてもなくいる感じで。
小川 そうね。うちの夫もテレビの収録がなくて、ほぼ2ヵ月、ずっと家にいたの。こんなに長くうちで一緒にいるなんて、結婚して初めて。毎日、夕方になると二人で犬の散歩に行ってね、1匹ずつ連れて。私はいつも決まった散歩コースだけど、夫が「こっちに行ってみようや」と言って、新しい道を見つけたり、ちょっと新鮮だった。
渡辺 時間を持て余すので、うちは断捨離をやってね。片付けていると、子どもたちが小さい頃の遊び道具が出てくる。トランプ、カルタ、ボードゲーム……。で、久々にやってみるかと。
小川 あらあ、楽しそう。
渡辺 まずはババ抜きから。86歳の義母も入れて、長男、次男、女房、俺とでやるんだけど、身内で遠慮がないから壮絶な戦いになる。カルタにしても、札を取るのに「ありゃ~っ!」って立ち上がる勢いで。ティッシュの箱まで飛んでくるしね。負けた妻は本気で怒る。子どもたちが小さかった頃のほのぼの感はまるでなくて。
小川 あははは。
渡辺 いい歳して、カルタだのだの本気でやって。面白かったなあ。家族の関係を見つめ直すきっかけにもなった。
小川 いい時間を過ごせたのね。