「ライバルはマガジンじゃなくてコロコロだ」

中山 そうした中でジャンプ編集長の話が舞い戻ってきます。1996年、第6代として鳥嶋編集長が誕生します。当時、ジャンプ編集部をどう見られていたんですか?

鳥嶋 ジャンプの強みだった「新人作家の育成」がおろそかになっていて、冒険する部分がないマンネリな雑誌になっていた。部数主義を追求した結果、新陳代謝ができない体制になってましたね。

僕は『Vジャンプ』で忙しかったし、戻るつもりはなかったんです。3か月拒否し続けた挙句、もう他に選択肢がないというので、最後は「もう部数は戻りませんよ」という前提で引き受けたんです。

中山 編集長になって、どんなことを変えたんですか?

鳥嶋 編集長なんて現場仕事は半分で、残り半分は社内政治。上をどうやって説得するか。部数ばかり気にして、「マガジンに勝った、負けた」だのに一喜一憂していた。そのプレッシャーに押しつぶされそうだった編集部に、部数に変わる新しいモチベーションが必要だった。そもそも何百万部突破、なんて読者からしたら何の関係もない話だしね。

そこで部数じゃなくて、部署の利益だ、と。コミックもマーチャンダイジングも合わせてトータルで利益を上げているかどうかで判断すべきだ、という形に変えていきました。

中山 そして『マガジン』をベンチマークからはずすんですよね?

週刊マンガ誌の年間平均発行部数<『エンタの巨匠 世界に先駆けた伝説のプロデューサーたち』より>
日本の出版市場<『エンタの巨匠 世界に先駆けた伝説のプロデューサーたち』より>

鳥嶋 そうです。ライバルは『マガジン』じゃなくて『コロコロ』だ、と。マガジンは編集が強く手を入れてストーリーを作っていく。キャラクターを作る雑誌でいうと、むしろジャンプの競合はコロコロだった。小学生の低学年から高学年の情報をキャッチしてメーカーとタイアップしながら作っていくコロコロは、「編集の手がみえる」という意味で小学館で唯一の雑誌だった。