お金を使いましょうよ

「幸せになるため、ですよね? 幸せな老後を暮らすために、お金を運用するはずですよね? なのに、みなさん、その目的を忘れてしまう。稼ぐこと、お金を殖やすことばかり一生懸命になってしまっている人が多いんです。もうそれ以上、稼がなくてもいいのに、まだ切り詰めて、働いた分を貯蓄に回したり、投資をしたりして、もしもの時のために残しておこうとします。でも、もしも、って何ですか? いつからが“幸せな老後”なんですか? いつお金を使うんですか? もちろん、どのくらい残しておけばいいかはライフプランから考えたほうがいいです。でも、お子さんがいるわけでもないし、ご自分の資産は誰かに遺すつもりじゃないんですよね?」

そうです。独身子なしの長所でもあり短所でもあるのは、老後を見てくれる人がいない代わりに遺すべき人もいないということです。自分の資産を使って、老人ホームや介護費用や、果ては葬式費用まで、自分のことは自分で賄いたいだけです。

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「自分の資産は生きている間に使い切ってしまって良いんですよね? でしたら、貯蓄や投資に回さないで、自分の家を買う頭金に使ってもいいじゃないですか。何歳かの時点で、投資は少しずつ手じまいをして、利回りは低くても、簡単な資産にポートフォリオを組み替えたほうがいいんです。そういう、ポートフォリオ全体から見て、貯めるばかりじゃなくて、お金を何で持ち、何に使うか、考えた方が良いんですよ」

「70歳、75歳になってまで資産を殖やさなくちゃいけない、ってことはないですよね。将来、70歳を過ぎて、使えるお金がないからって、ただ家に籠もっている人生は楽しいですか? 楽しくなさそうですよね。ホントは資産はあるんですから、人生を楽しむことを考えましょうよ。自分のお金は全部使い切って、亡くなったほうがいいでしょう。お金が足りなくなることを心配するのは分かるけれど、たぶん大丈夫です。そんなに資産を持っていたってしょうがないでしょう」

確かにそうです。高齢になるほど、お金は使えなくなります。大きなお金を使うには体力が必要だからです。母を見ていても思いますが、年を取ると、大してお金は使わなくなります。海外旅行に行ったり、国内のリゾートまで出掛けたりすること自体が、面倒になるからです。若くて、気力も体力も胆力もあるうちでないと、どかんと使おうにも、使えなくなってしまうのです。

「みなさん、自分では資産を使い切るつもりって言いながら、多くの高齢者がお金を残します。何歳まで生きるか分からないからって、用心して、つつましく生きて、結局使い切れなかった分が、けっこう残ります。それで相続税がかかって、国に税金で取られちゃう。私はいつも言うんですよ、お金を使いましょうよって。自分で使い切るつもりだったんですよね。なら、『この金額だけは必要だから残しておく』っていう以外のお金は、自分で使いましょうよ、って」