それこそが「幸せな老後の暮らし」

目からウロコ、コペルニクス的大転換、驚き桃の木、です。「お金は生きてるうちに自分に使え!」とは! 今まで、老後資金というと、貯めること、投資すること、殖やすこと、せめて減らさないこと、ばかりを考えてきたのですが、Y氏の言うことも、もっともです。何のために殖やすのかといえば、長生きリスクに耐えるためです。

でも、長生きリスクに耐えられるだけの資産が手元に確保できているならば、それ以上の分は、自分のQOLを高めるために、「いかに使うか」を考えた方が良い、だなんて。ガチガチに節約して投資に回し続けなくても良い、だなんて。

ならば、「これだけは崩してはいけない」と思い込んでいる「虎の子」の金融資産だって、今後30年間の自分のQOLを高めるために、いまマンションの購入資金に充ててしまっても良い、のかもしれません(この辺、まだ微妙に「なんとなくの不安」があり、すぱっと「使っちゃえ!」とは割り切れていませんが)。

でも最低でも、甥姪ら親族に迷惑をかけることなく、経済的には、最後まで自立して過ごしたいです。その際の「この金額だけは必要」という金額は、どう計算するのでしょう。

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Y氏いわく、「70歳になったら、もう新たな投資はしなくて良いです。そうすると、今は投資に回している月々の出費も減りますよね。70歳を過ぎたら、逆に、それまで投資していたものを徐々に取り崩していきます」。具体的な老後の生活費として参考になるのは、国が「老後2000万円問題」の時に示した高齢者夫婦世帯の支出です。

住居費込みで、月約26.4万円でした(2019年6月、金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」から)。収入との差額約5万円を貯蓄から取り崩すため、30年間で計約2000万円必要だ、という計算でした。

私のように単身の場合、家賃または住宅ローンの返済を含めても、支出はここまで多くならないでしょう。それよりも、「例えば、年に1度、ビジネスクラスで海外旅行に行くのはどうです? その費用として年100万円余分にみておきましょう。こういうことにこそお金を使うべきです。そのために稼いで貯めてきたんですから」と、Y氏は提案します。

それこそが「幸せな老後の暮らし」じゃないか、と。こうした贅沢費と生活費を合わせた総額が、「必要になるお金」です。この額は、介護施設に入った後は施設代に充当されます。この金額と、厚生年金や個人年金などの収入を比べて、毎月いくら足りないか、貯金からの手出しがいくら必要かを考えるのです。

Y氏は強調しました。「将来の姿を考えることが大事です。将来像が見えてなくては、ポートフォリオは組めません。何にいくらお金を使いたいか、どんな暮らしがしたいか。老後の生活のイメージが湧くと、使う金額が定まって、どれだけ残せばいいかが分かり、ならば、いくらまで使ってもいい、と決められます」。

詳細なシミュレーション結果は後日もらうことにしましたが、ざっくりと分かったのは、マンションを買っても良いこと、その際は頭金を積み増した方が良さそうなこと、その頭金用に資産を切り崩しても大丈夫そうだということ、でした。

では、そもそもマンション購入の予算は、どう決めればいいのか、ご存じですか? ここは具体的な計算式でご紹介します。

※次回は「いくらの物件が買える? 試算の仕方教えます」です。

◆本連載が書籍化され3月8日に発売されました