何から何まで面倒みてもらうのが当たり前?

高尾 カナダは日本と違って、患者が医師を選べないシステムなんですよね。まずはかかりつけ医などクリニックの医師が患者を診て、その人に必要な専門医へ誘導する。だからこそ加奈子さんは専門性の高い医療を受けることができたわけだけど、そこに行きつく過程も、行きついてからも、ちょいちょい大変な思いをされたそうですね。

西 そうなんです。告知後、がんセンターから全然連絡が来なくて何度も電話で催促したり、注射薬を自分で探して手に入れなきゃならなかったり、手術当日にほかの患者と間違えられて鎮痛剤を飲みそびれたり(笑)。ほとんどが連絡ミスやちょっとした手違い。

最初は「なんでこんな目に!」と思ったけど、みんな、自分でできることは自力で何とかするのが当たり前、という雰囲気なんですね。私も徐々に「まあ、人間やし間違うこともあるよね」と思うようになって(笑)。

一方で、治療は本当に素晴らしかった。私のがんにピッタリ合う抗がん剤を投与してくれて、あっという間にがんは小さくなったし、手術痕も惚れ惚れするほどきれいで。施してくれた医療技術には感謝しかないです。

高尾 そこが大事です。日本は、専門家に専門以外の部分まで完璧を求めすぎます。病院に行ったら、何から何まで面倒みてくれて当然と思いがちだけど、そうじゃない。

本来、医者は専門分野を研ぎ澄ませて、その技術をきっちり提供できればいいはずです。患者さんは困ったことが起こったらその都度、自分から相談したり確認したり、何とかしようとする姿勢も持っていてほしいなと思います。