「棚貸しシステム」のリスク

由井 一方、もちろんリスクもあると考えていて。集客力がそこまで高くない方が棚を埋めてしまえば、やっぱり販売は厳しくなるし、お店全体の活性化という意味でもプラスに働きにくい。たとえばこの店舗でも、SNSから距離のある方の棚はなかなか動かない、という状況が生じています。逆に、活発にSNSを活用している方の棚の売れ行きは比較的良い、というのが実感です。

由井さん「新しい経営形態だけに、先をどう見据えるのか、というのがとても大事になります」(写真:本社写真部)

清水 なるほど。

由井 また、棚主が存在するということは、諸刃の剣でもあります。ある意味、ずっと顧客が店舗内にいる状態なので、彼らとのコミュニケーションやケアに多くの時間が要されることを覚悟する必要も。このお店なら、1対360という構図になりかねない。一つの棚に一日5分のケアをして1800分。棚主全員とシステマチックに対応するか、もしくはできる限りのサービスを提供するか。そうした方針もよく考える必要があります。

清水 棚主同士でのトラブル、なんてことも生じるかも。

由井 ですので「交流をどう考えるか」というのも重要な課題になります。また、棚主同士のコミュニケーションが始まれば、その交流の場としてカフェを併設したい、といった考えを持つ人も出てくると思いますが、当然ながら、その先ではカフェ経営にも取り組まなければならない。それこそコーヒー1杯で棚主は何時間滞在できるか、といったという点まで考える必要が出てくる。いずれにせよ、棚貸し書店は新しい経営形態でもあるので、先をどう見据えるのか、というのがとても重要になるはずです。

清水 よく考えているなあ。