登録ヘルパーは孤立しがちな仕事
原告の藤原さんも、ヘルパー歴31年のうち最初の8年間は公務員として働いていた。
「年収は今の3倍でしたが、難しいケースにも対応していました。難病と精神障害が重なった複雑な症状の方を担当したり、セクシュアルハラスメント、カスタマーハラスメントに山ほど遭ったり。困難なケースは民間ヘルパーさんのところに行かないよう公務員が受け持っていたんです。
ただ研修は受けられたし、常に保健婦(当時)や医師をはじめ、自治体のケースワーカーのサポートも受けられた。公的なチームで仕事をする安心感は大きかったです」と藤原さん。
一方、民営化後の登録型ヘルパーは、大抵のことは自分で解決しなければならないのが現状だ。
2006年に「ヘルパー同士の情報交換などによって、一人ぼっちのヘルパーをなくそう」という目的で立ち上げられた市民団体「京都ヘルパー連絡会」の事務局長、櫻庭葉子さんはこう証言する。
「非正規登録型ヘルパーでも所属事務所はありますが、基本的に1人で訪問して完結する仕事のため、孤立しがちなのが問題です。現場に直行直帰で事業所に立ち寄る機会が少ないことで、心理的な距離がある。困ったときや、自分がしていることが利用者さんにとって適切なケアなのか不安なとき、すぐに相談できる相手や機会がないのが実情です。ヘルパー同士で横のつながりも持てません。
また、ヘルパー不足の影響で、1人の利用者さんに複数の事業所のヘルパーが入る場合などは、とくに情報の共有が難しい。介護拒否が強い認知症の方のケアにはお声がけが大事なのですが、ヘルパーごとにお世話の方法が違うと、利用者さんが混乱してパニックになることも。ヘルパー同士で連携が取れないことは利用者の生活の質や、ときには生命にもかかわります」