認知症になっても人生終わりではない

似ているようで異なる認知症と老人性うつの特徴について、順に説明していきます。

まず認知症とは、脳の変性により認知機能が低下し、生活に支障をきたしている状態のこと。なかでも約6割を占めると言われるアルツハイマー病は、異常なたんぱく質が脳内に蓄積し、神経細胞が死滅して、脳が萎縮していく病気です。

「認知症になったら家族の顔もわからなくなり、人生終わりだ」――世間にはそんな誤解もあるようですが、現実は違います。老年性の認知症の場合、脳の萎縮や認知機能の低下は発症の10年、20年前から始まり、発症後は10年ほどかけてゆっくり進行するのが一般的。急に何もかもわからなくなるわけではありません。

また、認知症になると「徘徊する」「暴れる」というイメージを持っている人もいるでしょう。確かに、一人で出かけて迷子になるケースはよくありますが、徘徊する人はごくわずか。暴れる、叫ぶといった問題行動は、原因があってのこと。通常は、認知症が進むにつれ、むしろおとなしくなる傾向があるのです。

では、認知症はどのような過程を辿るのか。進行には個人差がありますが、一般的には「記憶障害」から始まります。特に新しいこと、直前の出来事が覚えられないので、同じことを何度も質問したり、探し物をすることが増えるのです。それでも判断力や思考力などの知能は保たれ、普通に暮らせる状態が3年から5年続きます。

次に表れるのが、今何時頃か、自分はどこにいるのかという時間や場所の感覚がなくなる「見当識障害」。続いて、人の話を理解できない、料理の手順がわからないなど「理解力障害」が目立ってくる。末期には長期記憶が失われ、家族の顔や名前も忘れ、会話が成り立たなくなります。