リヒト滞在客が集う専用ラウンジ。静かに読書をする人もいればおしゃべりを楽しむ人も(写真提供:やましたさん)

ホテル経営と共通する日本の住まいの問題

そんな理想の暮らしが始まりのんびりと過ごせばいいものを、ついつい私はホテルのバックヤードを見るたびに、「片づけたい!」という気持ちが抑えられなくなってしまいました。(笑)

もとは国の年金事業で建てられた宿泊施設なのですが、それが破綻し、幾度となく経営形態が変わっています。そのたびに使われなくなった大量の備品、椅子やら食器やら、キャンペーンのポスターから経理の書類までが、広大な建物の表からは見えない場所に見境なく詰め込まれていたのです。

不要になったモノでも、しまう場所があるからどんどん放り込み、そのうち何をしまったかさえ忘れてしまう。誰も責任を取らず、片づけることも処分の判断もしようとしない。それは、事業運営でも家庭経営でも同じ。私がこれまで断捨離してきた空間、いたるところで遭遇してきた問題そのものでした。

このままではいけない、自分が今後の人生を過ごす場所はもっと快適にしなければ――そう決心しました。ホテル側も危機感はあったようで、スタッフの方や断捨離仲間の協力を得て、不要なモノの処分を始めることに。

そうして3ヵ月ほどかけて断捨離した結果、インバウンド客が途絶えてからの在庫品がそのまま放置されていたギフトショップはギャラリーに。また、カフェはリヒト滞在客専用の共有キッチンがあるラウンジに生まれ変わりました。

そして、断捨離を通じてホテルのみなさんとの協働意識も高まったと感じています。