「住まい」のシェア
最初にたまたま泊まり合わせたリアルな完全アドレスホッパーは、30代のカップルでした。車一台で、二人で拠点から拠点へと旅しているとのことでした。東海地方のある拠点で出会ったのは6月初旬。この日は、ちょうどよく晴れていました。前夜に別の拠点から移動してきたカップル。女性が、「良かった~洗濯物が干せる~」と喜んで、朝から庭先の物干し竿に二人分の服を干していました。拠点は「住まい」のシェアですから、泊まる部屋のほか、洗濯機や乾燥機もあります。天気が良いときは、こんなふうに滞在者の洗濯物で満艦飾になることもあるそうです。
また、台所には鍋やフライパンなどの調理器具や炊飯器、電気ポットなども完備されています。普通に料理をして、「生活」することができます。
二人の関係性までは詳しく聞きませんでしたが、このカップルは、おそらくは夫婦。子どもはいません。二人ともがオンラインで出来る仕事をしているといい、拠点を数日から1週間程度ごとに車で渡り歩いている、とのことでした。拠点はどこもWi-Fi完備です。定住地を持たず、拠点から拠点へと移り住んでも、オンラインでの仕事なので特段困ることはないそうです。「自宅がなくて、ずっと移動していると疲れないんですか?」と聞いたところ、大丈夫、とのこと。「疲れたと感じたら、気に入った拠点に、2週間くらい泊まり続けたりします」。住民票は、男性の実家に置きっぱなしだ、と言ってました。
別の日、別県の拠点では、現役アドレスホッパーと元アドレスホッパーの30代の男性計3人に会いました。うち1人は、バックパッカーのように大きなリュック一つに全財産を抱えて、全国を移動している、とのことでした。一つの拠点で仕事を区切りのいいところまで終えてから、次の拠点に向けて移動します。うまくJRの鈍行で行けるところを渡っていけば、さほど交通費もかからないと言います。本は読んだら捨てるか売るかあげるかするし、荷物は増やさないとのこと。住民票は実家に置いたままだそうです。
別の1人は、1年以上もアドレスホッピングを続けているそうです。1年以上!も定住地を持たないだなんて。「よく疲れませんね」と聞くと、次の予約を取るのに疲れると、友達の家に居候したりして1ヵ所に長居し、一休みするそうです。残るもう1人は、疲れたのでてアドレスホッパーを中断し、いまはシェアハウスに住んでいるとのことでした。