「終の棲家」を探す旅に利用するなら有効
偶然かもしれませんが、私が会ったのは、カップルの女性を除いて、みなさん30代の男性でした。でも、彼らに聞いた話では、アラ還世代でも拠点から拠点へと旅しているアドレスホッパーの猛者がいるとのことでした。偶然にも、次の拠点では、アドレスホッパーではないものの、相当な頻度でいろいろな拠点を旅して回っているという63歳の男性A氏に遭遇できました。
A氏の自宅は関東。妻を自宅に残して、いつも一人で旅しているとのことです。行き会った拠点では5連泊中でした。この業者のサービスには、追加料金を払えば、一つの拠点に留まれる制度もあります。男性はその制度を使って、昨年夏から秋にかけて4ヵ月も、中部地方のある拠点に泊まっていたそうです。山歩きが趣味で、まだ元気で体が動くうちにたくさんの山に登りたいといい、関西、中部、関東地方の山に近い拠点は随分利用してきたそうです。私と会った翌週にも、別の拠点の予約を入れており、「定額で、いろいろなところに泊まれる」お泊まりサブスクは、コスパも使い勝手も良い、と話していました。
さらにA氏は、滞在先で異なる人生経験のある人や、世代や職業も様々な若者とふれあうことも楽しい、と言います。(基本的に、人付き合いが苦ではなく、コミュニケーション力に長けた人にしか、楽しめなさそうです。でも、部屋に籠もって本を読んでいたい人は、そうしていても別に構わない、他の利用者とコミュニケーションをしたければする、したくないならしなくていいのだ、とのことでしたが。)
でもさすがに若者は多いけれど、定年後の人は少ないのではないでしょうか。A氏に、同世代の人に会ったことはありますかと聞いたところ、住所不定のアドレスホッパーではなく、A氏も利用した1拠点に留まる契約でならいるようだ、と教えてくれました。確かにそれなら体はきつくないでしょうが、月に3万円ほどが余分にかかります。老後を見据えて、安く住み続ける「家」としては向きません。
ただ、「終の棲家」を探す旅に利用するなら有効でしょう。業者のホームページにも、定年後に限らず、子育てに向く場所探しなどで、定住するならどこがいいかを確かめるためにサービスを使っている人が紹介されています。拠点に泊まり、近所のスーパーや商店街で買い物をして、「生活」を体験できますから、物価や生活利便性など、その地域での暮らしやすさが分かります。ホテルや旅館に泊まったのでは触れることのない「住んでみた感覚」が体験できます。自然環境や交通利便性などは、贅沢にハレを楽しむ観光客ではなく、日常生活を営む居住者としての視点で確かめられます。拠点を定めて数ヵ月も長逗留してみたら、隣近所との付き合いを経験することもあり、馴染みの店や地元の知人友人もできることでしょう。
ともあれ、「お泊まりサブスク」は、安く旅行するには良いけれど、住処としての利用には向かなさそうです。若者ですら疲れることもあるというホッピングですから、老後を迎える年齢には厳しいはず。「老後ずっと住む家」そのものではなく、「老後ずっと住むならどの場所がいいか」を探すなら使えそうです。アラ還からの地方移住を考える時に、自主的な「お試し移住」サービスとしていかがでしょう。もちろん、社交的な人には、世代の違う人々とふれあえる、コスパの良い旅行として、お勧めします。(私は気疲れしてしまうので、取材じゃなければパスですが、苦笑)
●間取りクイズ
Q この間取り、どこが要注意でしょうか?
バルコニーは南向きですし、収納も、和室と洋室それぞれにあります。住みやすそうです。