高齢化する被害者に一刻も早い救済を

現在、提訴しているのは、全国で13人。当事者が10人、その配偶者が3人だ。今回の裁判では、原告はいずれも旧優生保護法によって、日本国憲法第13条(幸福追求権)にもとづく「子どもを産み育てるか否かの生殖に関する自己決定権」を侵害されたと主張し、3000万円以上の賠償を求めている。

また弁護団は、96年に母体保護法に改正した際、被害者を救済する特別立法を作らなかった国や国会の不作為をも追及した。ところが国は、改正時点で被害者の98%が手術から20年経っており、民法の「除斥期間」を理由に賠償の権利が消滅していたと主張する。

「98%が権利を失っていたからこそ、彼らを賠償する『特別立法』を作るべきだったのです。しかし、あえて作らなかった。そこを争点にして闘っていきたい。世論が盛り上がったため、国は優生手術が『合法だった』とも『違法だった』とも言えず認否に窮しています」(新里弁護士)

優生保護法が母体保護法へと改正された1996年時点で「当事者の98%が倍賞の権利を失っている」(20年経過して民法の「排斥期間」を過ぎている)として、国は特別立法の制定を行わなかった

国会も動き出した。すでに超党派の議員連盟と与党のワーキング・チームが、被害者救済に関する議員立法の骨子を取りまとめている。

手術を受けた被害者は全国に約2万5000人いるとされ、優生手術台帳に記録のある人は3033人。2万人以上には記録がない。記録のない人がどう手術を立証していくかが課題だ。また、いざ救済措置が決まっても、どのように当事者に通知するかという問題もある。

「通知が他者に渡り、プライバシーの侵害になる可能性もあります。当事者が亡くなっている場合もある。国が慎重に調査したうえ、『被害者』であることを前提するのではなく、『補償立法を作りましたので、相談機関に申し出てください』と通知するのが一番いい」(新里弁護士)

「優生思想」によって、憲法で保障されているはずの権利を踏みにじられてきた人たち。被害者はすでに高齢だ。過ぎ去った人生を元に戻すことはできない。しかし、国は謝罪と補償をすることはできる。一刻も早い救済が求められている。