準備さえしておけば “勝ち”に辿り着くと思っていた

ーー神童と思われた10代の少女は、テストの点数獲得に“勝つ”ことを、まるでゲームのように楽しんでいた。なるほど、と一枚のヴェールが剥がされる。ただ学業では「優秀」だった山口さんも、財務省に入省すると劣等感を抱くことに。社会人は、自分で考えて動くことが重要になる。もう指示をしてくれる先生はいない。この先、いったいどう仕事をしていけばいいのか……。著書の中では、入省後に大事な鍵をなくしたことを周囲に謝罪できなかった経験が記されている。

あの時は“鍵をなくした自分”を認めることができなかったんです。もし認めようものなら、「自分はエリート」という自己肯定、そしてアイデンティティーを全て否定することになる。

学生時代も「私はできない人間だ」という思いはどこかにあったんですよ。

でも言われた通りに勉強や準備さえ入念にしておけば、最終的には”勝ち”へ辿り着くと思っていた。その方法が、社会ではまったく通用しませんでした。

結局2年で、財務省を辞職。逃げるように転職した弁護士事務所でも仕事がうまくいかず、「消え去りたい」と『いのちの電話』に相談したことも。

電話はつながらなかったんですよ。でももしつながっていたら、自分の抱えたことをぜんぶ話していたと思う。

知らない人だから話せるんですよね。家族や同期、友人には自分の弱みを見せることなんて絶対にできなかったけれど、顔の見えない人の前なら、泣いたっていいかなって。


挫折からのキャリア論』(著:山口真由/日経BP)

「仕事ができなかったんです、私」――。「東大を全優で卒業」「財務省に入省」「米ハーバード・ロースクール卒業後、NY州弁護士登録」といったキラキラな印象のある著者ですが、実は人知れぬ悩みを山ほど抱えていました。時間がかかった「自分探し」の末に見つけた「キャリアの軸」とは? 悔しい挫折や失敗を乗り越えて、前に進むエネルギーに変える「飴玉メソッド」も詳しく紹介。