ところが、私が小学校低学年の時、母ががんを発症したことがわかりました。太陽のような存在だった母が入院し、収入も半減。さらには莫大な治療費が必要になったのです。父はより多くのお金を稼ぐために、遠くに働きに出ることになりました。

私たちも、子どもながらに家事を分担するなど必死で生活を支えて。ただ、悪い時には悪いことが重なるもの。家が火事に遭ったり、やっとの思いで見つけた次の家も追い出されてしまったり……そのたびにどんどん貧乏になっていく。今振り返っても大変な状況でした。

幼少期つらかったのは、貧困と韓国人差別が重なった時。同級生の親から「あの子は韓国人だから遊んじゃダメ!」なんて言われたことがあります。どんなにいじめられてもずっと我慢していましたが、ある時あまりの執拗さに、反抗したことがありました。

そうしたら、その報復に今度は弟と妹がいじめられるようになってしまい……。自分がいじめられたことよりも苦しい事件でした。

その頃、あまりにつらくて教会の神父さんに聞いたことがあるんです。「真面目に頑張っている人に対して、どうして神様はこんなに酷い仕打ちをするんでしょうか?」と。すると神父さんは、「神様はその人をより幸せにするために、その人にしか乗り越えられない苦労をお与えになる。それによって器と心を大きくしてくださるんです」とおっしゃいました。

「まず、今起こっている出来事を信頼しなさい」。そして、「自分から被害者意識を取り除くことが大事」だと教わりました。被害者意識を持つと、どこかに加害者を作って誰かのせいにする心の癖がついてしまうんですよね。それ以来、「幸せになるために、次は何を乗り越えればいいんだろう?」と考えるようになりました。

<後編につづく

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