弟と妹たちに会社の金を盗まれた
私はいま、父のきょうだいのお金の無心に苦しみながらも、父の資産を守るべく彼らに対峙する日々を送っている。
父は、弟2人と妹2人がいる5人きょうだいの長男だ。弟たちは大学を卒業後、商社と銀行にそれぞれ就職するも、自由気ままな上の弟はすぐに会社を辞め、下の弟は30代で脳梗塞を患って休職。その後、もともと仕事ができなかったこともあり依願退社に追い込まれた。
主婦になった2人の妹のうち、長女はブランドものが大好きな派手好みで、次女は習い事三昧の日々を送っていた。癖の強いきょうだいたちに対して私の母は一線を引いていたため、盆と正月の行き来もない関係だった。そう、父を除いては。
父は大学を出た後、23歳で鉄鋼関係の会社を創業。長男の責任感からか、仕事を失った弟たちを雇い、「家計のために働かせてほしい」と懇願する妹たちに経理を任せていた。
そんな父も70歳となり、リタイアして隠居生活を楽しむのだろうと思っていた矢先、離れて暮らす私に母から、父が交通事故に遭ったという衝撃的な電話がかかってきた。
医師の「ひどい脳挫傷で今夜が峠です。元の生活に戻るのはまず無理でしょう」という言葉に泣き崩れる母の横で、私は涙が出なかった。なぜなら、心配事があったからだ。
実は数ヵ月前、「会社の通帳から金が引き出されているが、使途がわからない」「会社のお金がほぼ残っていない」などと、不可思議なお金の動きについて、父から相談を受けていたのだ。どうやら父の弟と妹たちがグルになって、会社のお金に手をつけていたらしい。
その話を聞いた時、私は父に「実印と通帳、カードを叔母さんたちから取り上げて」とアドバイス。心優しい父は実行できただろうか……。早速、父の部屋の大捜査にかかった。必死に探すこと2時間。引き出しの奥に押し込まれた箱の中に、印鑑、通帳、キャッシュカードを発見し、ほっと胸をなでおろした。