クマは獲物があるうちは付近から離れない

翌日、村の男たちがA宅の裏山でBの遺体を発見し収容、A家にて通夜が行われる。

村民はヒグマに怯え、女衆や子どもたちは比較的家が広く、地理的に安全と思われた近隣のD宅に避難していた。

そのため通夜に集まったのは、A家で養子として暮らしていたCの父であるa夫妻のほか、村の男衆、合計9人というわずかな人々であった。これには、もう一つの理由があった。

クマは獲物があるうちは付近から離れない。

開拓民は小さい頃からそう聞かされていたからである。できればA家には近づきたくない、そう思い恐れる者がほとんどだった。

そして恐れていたことが現実になってしまう。

『日本クマ事件簿』(著・刊:三才ブックス)