(写真提供:Photo AC)
夏になり、各地で出没情報が頻繁に聞かれるようになってきたクマ。今年も、北海道で釣り客が襲われ、命を落としたという事件がすでに起きている。クマの被害に遭わないためには、クマの特性を知ることが一番。『日本クマ事件簿』からその特性が伝わってくる、過去に起きた凄惨な事件を紹介したい。

国内最多の死者数!三毛別ヒグマ襲撃事件

クマによる人身事故で国内最多の死者数を出した、三大悲劇の一つともいわれる事件が、1915(大正4)年12月に北海道苫前村の山深い地で起きた「三毛別ヒグマ襲撃事件」だ。

史上最悪と呼ばれた本事件は、12月9日午前10~11時の間(新聞報道では、午後7時頃)に第一の惨事が発生。

当時の天候は晴れていたが、70cmの雪が積もっていた。厳しい冬がすでに訪れ、ヒグマはこの時期を前後して冬ごもりを始める。

そんな状況下、三毛別山の西およそ2.5km地点、ルペシュペナイ川右岸に暮らすA(42歳)家に突然の悲劇が襲う。

当時の開拓民の小屋は、ほぼすべてが同様だったようだが、馬小屋のような掘っ建て小屋であったというA宅に、1頭のヒグマが侵入して来た。オスの成獣であった。

乱入したヒグマは次々と住人を襲った。被害に遭ったのは、在宅していたAの内縁の妻であるB(34歳)と養子のC(6歳)。この2人がヒグマに襲われ、殺害される。さらにヒグマはBの遺体にかぶりつき、そのまま持ち去って行った。