壁を破っての乱入

午後8時頃、逃走していたヒグマが、再びA家へ侵入してきたのである。BとC、2人の遺体を安置していた部屋の壁を破っての乱入だった。

灯していたランプが消え、2人の遺体を収めた棺桶がひっくり返された。バラバラになった遺体が床に転がり散らばった。

その後、さらなる悲劇が発生する。通夜を行っていたA家から北500mほどの地点に居を構えるD宅、女衆と子どもたちが避難していた家屋が惨劇の場となったのだ。

この時、D宅には、合計10人(胎児を含めると11人)が身を潜めていた。

不幸にも多くの人が集まっていた避難所にヒグマが侵入する。通夜会場であるA家からヒグマが逃げ出した直後、午後8時50分頃のことである。

「腹破らんでくれ!」「のど喰って殺して」…「三毛別羆事件」の凄惨さを伝える看板。北海道苫前郡苫前村三毛別にて(写真提供:風来堂)