獲物への執着

この事件は、山に餌がない時期に起きていることから、クマが「一度獲物と認識した遺体を再び狙った」ために生じたと考えられている。

またクマは、一度「自分の物」と認識した獲物を人間に取り返されると「奪われた」と感じ、その相手を徹底的に排除するため、攻撃的になるとも言われる。

この凄惨な事件も、死者を弔うために家族の遺体を家に連れ帰ったことが、結果としてクマの襲撃を招いたと思われる。

現場復元地に建つ巨大なヒグマの像(写真提供:Photo AC)

※本稿は、『日本クマ事件簿』(著・刊:三才ブックス)の一部を再編集したものです。


日本クマ事件簿』(著・刊:三才ブックス)

昨今、ニュースでも話題に上ることの多い、クマによる獣害事件。絶対的対処法のない巨大生物に、人はどう付き合うべきなのか。本書は、明治から令和にかけて、人がクマに襲われて亡くなった事件のうち、記録が残るものはほぼ全て収録。当時の報道や、関係者の証言から浮かび上がる衝撃の現実。熊撃ち猟師の経験談、専門家の研究成果も参考に、「森の王者」クマの実態に迫ります。