概要

旬なニュースの当事者を招き、その核心に迫る報道番組「深層NEWS」。読売新聞のベテラン記者で、コメンテーターを務める伊藤俊行編集委員と、元キャスターの吉田清久編集委員が、番組では伝えきれなかったニュースの深層に迫る。

来年4月からトラックドライバーの働き方改革が始まる。長時間労働は是正される反面、荷物の輸送量は減り、物流が滞ることも懸念される。「2024年問題」と呼ばれる危機から、日本の物流をどう守るのか。消費者の意識改革も求められる。敬愛大教授の根本敏則氏と経済評論家の加谷珪一氏を迎えた5月31日の放送を踏まえて、編集委員2氏が語り合った。

物流の危機必要な協力

足りなくなるドライバー

「我々の検討会は、対策を講じなければ、全国の荷物の14%、4億トン相当が運べなくなるとあえて公表した。ドライバーの不足をどう解決していくのかを国民も考えてほしい」=根本氏

「荷物の量が減るだけではない。病院に注射器が届かなければ、必要な医療を提供できなくなる。物の不足が続けば、物の値段がじわじわ上がる。生活全般に幅広く影響する」=加谷氏

伊藤トラックドライバーの時間外労働に上限はありませんでした。来年4月からは年960時間までに制限されます。ドライバーの過労から悲惨な事故が起きたり、労災が認定されたりしています。労働環境は改善されなければなりません。ドライバー1人ひとりの働く時間は短くなります。反面、荷物の需要は変わらず、ドライバーも増えないのであれば、必要な量を運べなくなることが懸念されています。これが「2024年問題」です。

物流2024年問題©️日本テレビ

トラックドライバーの労働時間は他の業界に比べて2割長く、所得は1割低いと言われます。日本では荷物が早く正確に届きますが、ドライバーの過酷な働きによって支えられてきたことを忘れてはなりません。ひずみが生まれており、荷物を出す側も受け取る側も協力して、これからも物流を維持していける環境を整える必要があるのではないでしょうか。加谷さんの指摘されたように、ドライバーの不足にとどまらず、社会全体に影響します。

吉田働き方改革関連法は2018年に成立しました。トラックドライバーについては、実施まで5年の猶予が設けられました。残された猶予は1年を切りましたが、政府の検討会座長を務める根本さんの話された通り、社会全体で改善策を考えるという状況にはなっていません。コロナ禍の3年、たくさんの荷物を宅配してもらったと思いますが、荷物を運んでくれる人たちの苦労を想像できたでしょうか。

政府は6月、対策をまとめました。トラックドライバーの長時間労働の理由の一つとして、配送先での長い待ち時間や荷物の積み下ろし作業が挙げられます。対策では、そうした余分な時間や作業を減らすよう、荷主や物流事業者に求めています。さらに、物流にコストがかかっていることを消費者に理解してもらうため、ネット通販でよく見る「送料無料」の表示の見直しを求めます。配送を効率的に進めるデジタル化も必要です。日本は労働力が減少するなか、働き方を見直すという難しい課題を抱えており、ドライバーの業界に象徴的に表れています。

トラック運転手「長時間労働の常態化」©️日本テレビ