祖父母にとって孫は無条件で可愛いもの。誕生日、クリスマス、お年玉、七五三に入学祝のランドセル、長じては教育資金に結婚祝……。孫にかける金銭は愛情の証しと思う人も多いだろう。ただ、その愛情に偏りがあったら? 孫ごとに扱いが異なることで、トラブルになった家族を追った
長女の子には手厚い援助
「お姉ちゃん、知ってる? 母さんたら、ヒロシくんに車買ってあげたらしいよ」
10年前、カズコさん(65歳・仮名=以下同)の不満は、妹のこの告げ口で頂点に達した。ヒロシというのは姉の長男で、大学を卒業してから10年も海外を放浪していた甥だ。帰国してやっと会えた孫に、おばあちゃんが奮発したというところか。
カズコさんは、5歳上の姉と2歳下の妹がいる3人姉妹の真ん中。しっかり者の長女とちゃっかりした三女に挟まれ、小さい頃から引っ込み思案で何事にも一歩出遅れる性格だった。
母親は、そんな娘3人を平等に扱おうと腐心していたようだ。服はお揃い、高校入学時に長女へ時計を買ったら、妹たちにもそれぞれの進学時に時計を贈る。長女が東京の私立大学に進学したら、妹たちも東京の大学へ。卒業後、姉は地元の中国地方に帰り、カズコさんは関西で結婚、妹はそのまま東京に残った。
「親は、経済的にはけっこう無理していたと思いますね。姉は親の薦めでお見合い結婚。今は実家から車で1時間のところに住んでいます。結婚は親の言うことを聞いたのだからと、孫の世話はもちろん、七五三もお正月も成人式も実家に頼りっぱなし。ちょっと甘えすぎなんじゃないのと思っていました」
一方、カズコさんは親をお手伝い代わりに使うなど考えもしなかった。
「親も歳を取ってだんだん弱ってきましたからね。父が亡くなって母が1人暮らしになってからは、週に一度ご機嫌うかがいの電話をし、帰省の回数を増やすなど気にかけていました。それなのに、親から多大な援助を受けていた姉は、子育て終了後は実家に寄りつきもしません」