時代背景も調べて、初めて昭和歌謡の深みがわかる

上京のきっかけをくれた同世代の渚ようこさんが亡くなった時、まさに「ひとりだったら、こんな思いをせずにすむのに」と思いました。でも、やっぱり人に出会えたからこその喜びもある。そういう意味で、これは究極の人間賛歌だと思うんです。

ビジュアルからは想像のつかないムーディーな重低音を響かせるタブレットさん

阿久悠さんの曲でメガヒットした「青春時代」も、いわば逆説的な歌ですよね。昭和歌謡といえば80年代がブームの中心で、僕にとってもそこがオンタイムではあるんですけど、そこだけに集約されると昭和歌謡の本質は見えてこないような気がしています。

例えば、「阿久悠さん」=「ピンク・レディーだけ」ではない。時代背景を含めて、求められて作るヒット作ではない本当は“書きたかった世界”みたいなものも追求しないと、その作家の本質が見えてこないのではないでしょうか。

昭和は戦時中も入るわけで、軍歌があったり、ラブソングが禁止された時代もあります。恋愛ができない時期に、恋愛を投影していた歌までもが禁止になって。その時代を生きた立川談志さんも歌謡曲のマニアで、著書(『談志絶唱 昭和の歌謡曲(うた)』)でも「歌謡曲は恋愛の応援歌」とおっしゃってますよね。そういうところまで調べて、初めて昭和歌謡の深みがわかると思うんです。

当たり前ですけど、亡くなった方にはもう会えない。立川談志さんとか、上岡龍太郎さんとか、今思えば無理にでも押しかけておくべきだったなと後悔しています。ああいう生き字引のような方々に聞いておかなければいけなかった話が、実はたくさんあるんじゃないかーーそんな気がするんです。