「仔犬と出会った瞬間みたいに、胸がキュンとなりました。私のことをちゃんと覚えてくれていて、彼のほうから『この間は、どうも!』って。『ねぇ、めざしはないかな? 一緒に探してよ』『刺身は何が好き?』。もうグイグイと話しかけてくるんです。やっぱり、人懐こくて素敵だなって再認識しました(笑)」
買い物の後、サトシさんが休憩コーナーで自販機のコーヒーをご馳走してくれた。そこで彼が妻、息子夫婦、孫と同居していることを知る。
「奥様が羨ましくて、ちょっぴり嫉妬心も芽生えました。でも彼は、堂々と妻自慢をするんです。私なんてとてもかなわない女性なんだなって、素直に認めざるをえなかった。むしろ自分の妻をべた褒めする部分も含めて、彼が愛おしくなりました。それで、心の中で『片思いだけは許してください!』とお願いしつつ、メールアドレスを教えてもらったんです」
ミハルさんはそれ以来、《3日に1通》と決めて彼にメールを送っている。本音を言えば毎日でも連絡を取りたいが、疎ましく思われそうで怖いから、ぐっと我慢だ。したためる内容は、天気など他愛のないことから夫を亡くした苦悩までさまざま。彼からの返信を待つ間は、ワクワクが止まらない。
彼の文面は、いつも親身で温もりがこもっている。一度だけ、独り身の寂しさを打ち明けたときの返信は、「あなたは素敵な女性です。僕が独身なら放っておきません(笑)」。サービストークとわかってはいても嬉しくて、大切に保存した。
「彼は2、3週間に1度、『もし暇ならつき合って』とお茶に誘ってくれます。その瞬間、周りの空気がキラキラと輝いて見える(笑)。お茶に行くときは、きちんとお化粧して、派手すぎない程度におしゃれして。女性の嗜みを忘れずにいられます。彼に出会っていなければ、きっと引きこもりのヨボヨボ婆さんになっていましたね、私」
ミハルさんの顔いっぱいに、キュートな笑みが広がった。