地獄のような修業の始まり

高校卒業後は、北九州の美容学校で1年間学び、横浜元町の高級美容室「髪結處(かみゆいどころ) サワイイ」に就職。ここから地獄のような修業時代が始まります。

美容学校の理事長からは、「5年間は絶対にやめるな。澤飯先生は厳しいので、まともに続いた卒業生がいない。お前が最後の、うちの学校とのつなぎ役になるんだ」といわれて、覚悟を決めて行きましたが、修業の厳しさは想像以上でした。

『IKKO 人生十転び八起き。ケ・セラ・セラ』(著:IKKO/清流出版)

いちばん厳しかったのは、澤飯先生の奥さまで、フロアマネージャーをしていた澤飯公子さんです。

タオルの干し方から畳み方、掃除の仕方など、何をやっても「そんなんじゃダメ」と怒られる。住み込みの寮でも、立ち居振る舞いなどあらゆることを注意され、自分のすべてが否定されたように感じて落ち込みました。

公子さんが「あなたのいままでの常識を捨てて、ここの常識に変えていきなさい」といった言葉の意味もわからず、ただ戸惑うだけだった20代。その本当の意味を私がわかったのは、独立してからです。

社会に出ると、かかわる世界にはそれぞれの常識があり、その常識に自分が合わせていかなければ排除されてしまいます。その都度変わる仕事の現場で、柔軟に対応していくことの重要性を思い知らされました。