コロナ禍の中で生まれた歌「あけたら」
常田 このアルバムも2021年のうちに発表しようと決めていたけど、コロナの影響で遅れがちになって焦りました。
大橋 2020年の4月に初めて緊急事態宣言が発令された時は呆然としました。眼に見えない得体のしれないものがジワジワと世界中に広がっていることに怖さも感じて。
常田 世の中のすべての活動がピタッと止まって。あの時期は僕らも個々にできることを進めようと話し合って、連絡を取り合うこともしていなかったね。
大橋 僕は思いがけず時間がたっぷり確保できたと前向きにとらえようと努めていたんだけど、実際には心がザワザワしてちっとも集中できなくて……。音楽が全然作れない。でも僕は、CDのアルバムって写真のアルバムと同じように当時の自分を記録しているような感じがしていて。
常田 ああ、わかるわかる。
大橋 コロナ期間中のことも人生の一部として記録しておきたいなと思って、無理やり絞りだしたのが「あけたら」という曲。あの曲は自分のために書いた、いわば日記みたいなものだったから公にするのはどうかなって躊躇していました。それで、シンタ君に聴いてもらったんだ。
常田 僕らはどの曲も作詞作曲のクレジットが二人になっているんです。タクヤのごく個人的な作品というのは初めてだったけれど、僕の中では当初からお蔵入りにする気はなかった。みんなが不安を抱いているコロナ禍の今だからこそ発表する意味があると感じた。
大橋 結果として「あけたら」は僕がベースを作って、シンタ君が歌詞を整えてくれたり、最終的にアレンジしてくれたりとプロデューサー的な役割を果たしてくれたという点において独特な一曲になった。今では僕もリリースして良かったと心から思っている。