イラスト:大塚砂織

 

「ながらスマホ」にご用心!〜オーストラリア発

携帯電話、スマートフォンの普及で生活が便利になる一方、悲劇的な事件も起こっている。2006年、南オーストラリア州のアデレードで、ベビーカーを押しながら川岸をジョギングしていた女性が、かかってきた電話に応えている間に、ベビーカーが川に転落、乳児が死亡した事件は国民に大きなショックを与えた。

それ以来現在に至るまで、オーストラリア各地で携帯電話に関わる悲劇は後を絶たない。交通事故の22%、トラック事故の71%が、運転中の携帯電話の使用によるものだ。ドライバーの14%が運転中にメールをしているという調査結果もある。

こうした事故を防ぐため、2019年1月、私の住むニューサウスウェールズ州では、新たなシステムが取り入れられた。運転席での携帯電話使用を監視するカメラが、試験的に、道路沿いに設置されたのだ。このカメラはレーダーセンサーで車両を検知すると、車内を自動で撮影。それをAIが分析し、携帯電話やスマホを使用していないか確認するという、世界で初めての試みだ。

高性能カメラは、視界の悪い雨の日や暗い夜道、時速300キロでの走行時にも撮影が可能だ。18年10月に1ヵ月間、運用をした際には1日で1万1000人もの違反者が見つかっている。試験運用期間は90日間で終了した。今後、このシステムはオーストラリア全土で実施される見通しだ。試験期間中はカメラで発見された違反者に通知書が届くだけだったが、罰金や減点を科すことも検討されている。

運転中の携帯電話使用が最も多いのは、18歳から24歳の若年層といわれている。オーストラリアの若者のスマホ依存は深刻で、ある調査によると1日10時間以上をスマホでのネットサーフィンに費やしているというデータもある。その対策として、20年からビクトリア州の公立学校では、始業から終業まで、携帯電話の使用が禁止されることになった。この措置は、授業に集中させ、友達同士で会話することを奨励するために取られたもの。さらに、近年増えているSNSを使ったいじめを防止する意図もある。

便利な技術も使い方次第。スマホとよりよく付き合うためにも新しいルールは必要だろう。(シドニー在住)