「一着で、着る人の仕事の幅が広がり、行動をも変える。人生を変えるくらい、ファッションには力があると思う」(ジュンコさん)

ファッションには人生を変える力がある

ミチコ 文化が違うイギリスでブランドを立ち上げて、継続させていくには大変なことが多い。そんな環境でも、今もデザイナーとして仕事を続けられて、ひとりで生きていけていることは本当に幸せやと思うわ。

ジュンコ よく頑張ってると思うよ。私も振り返ってみると、20代は最高だった。ザ・タイガースなどグループサウンズの衣装を作り、青山に店を出して、お友だち関係も華やかで、いい時代だったから。

ミチコ 「サイケの女王」って呼ばれて、時代の寵児やったな。

ジュンコ でも今、同じことをしたいとは思わない。幸せの形は変わっていくし、今は今の幸せがある。私たちはずっと仕事が中心にある人生だけど、家族も自分も無事に健康で過ごせている、今はそういう身近なことに幸せを感じるようになった。

ヒロコ 幸せを実感するのは、苦しい思いをした後なのよね。たとえば、いろんな逆境を乗り越えてパリ・コレクションとか大きなショーに参加してきたでしょ。ショーを終えた瞬間、達成感を得られて、幸せだなと思う。

でも、もっと大きな幸せを感じるのは、その後。このショーを実現できたのは私の努力だけじゃない、協力してくれる仲間がいてこそ。みんなに愛されていることをしみじみと感じる、その時が一番幸せ。

ミチコ そうやね。私たちの仕事は、ひとりじゃ成り立たない。チームなんよ。生地屋さん、縫製工場の人たち、運送業者さんとかいろんな人が、それぞれの納期に向かってヨーイドンと動いてくれるからこそ、デザインしたものをブランドとして世に出すことができる。だから感謝の気持ちを忘れたらあかんし、みんなに好かれる人でないと続けていけない。

ヒロコ 最終的には人間性が問われるのよね。これは、仕事に限らずだけど。

ジュンコ 人のために何ができるか、が大事。

年2回、母の命日と岸和田だんじり祭には帰国するというミチコさん(写真提供:コシノさん)