母・綾子さんと姉妹で(写真提供:コシノさん)

ヒロコ お母ちゃんがよく言っていた「與(あた)ふるは受くるよりも幸福(さいはひ)なり」という聖書の言葉は、コシノ家の家訓みたいなもの。お母ちゃん流に言うと、「もらうより与えるほうが得やで」やね。

ミチコ 私、思うねん。デザイナーの仕事も、「与うる」やないけど、人に喜んでもらうのが一番嬉しいし、何よりの原動力やろ。

ジュンコ そうね。

ミチコ 私の服を着て、「気分が上がるわ」って喜ぶ顔を見ると、デザイナー冥利に尽きるわって思う。

ジュンコ 私のデザインする服は、〈勝負服〉だと言ってくださる人が多いの。「着ると自信が持てる」「いい仕事ができる」と言われると、本当に嬉しい。一着で、着る人の仕事の幅が広がり、行動をも変える。人生を変えるくらい、ファッションには力があると思う。

ヒロコ だから、常に自分の感性を磨かなきゃいけない。ファッションだけやっていたら枯れていってしまうもの。私は長く、絵画や長唄の趣味を持ち続けているんだけど、そこから新たなひらめきが生まれる。年を重ねるということは、そうした経験を積み重ねるということだから、より厚みのあるクリエーションに繋がると感じてる。

ジュンコ 何でも面白がるということ、前向きであることも大事。そのために重要なのは、やっぱり健康であることね。

ミチコ 確かに私たち、3人ともタフやからな。(笑)


映画『コシノアヤコの生涯』(仮題)

2011年にNHK連続テレビ小説「カーネーション」でテレビドラマ化された日本のファッション界に革命をおこし、デザイナーの草分け的存在のコシノ アヤコ。
2025年に、昭和から平成を駆け抜けたゴッドマザーの物語が、ついに映画化決定!
脚本: 池田テツヒロ/監督: 榎本次郎/撮影:曽根剛