心にときめきの対象を持っている人は、毎日が充実しているように見える。フリーライター・亀山早苗さんの取材から分かった、熱烈なファンたちの活動実態と推し活の《効能》とは
愛らしい姿はいつも心のなかに
いつしか「推し活」などと呼ばれるようになったが、もとをたどれば「熱狂的ファン」である。ときには自らの体力を削り、驚くような費用をかけても、「見たい、聞きたい、そばにいたい」。若いとはいえない年齢になっても、はたからあきれられても笑われても、熱狂は続く。それが「ファンたるもの」だから。
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「昔から動物好きで今も猫を飼っていますし、パンダも好きだったんですが、〈あの子〉はちょっと別格だったんですよ」
スマホの写真ファイルにぎっしり詰まった〈あの子〉を見ながら、カオルさん(58歳・仮名=以下同)は相好を崩す。〈あの子〉とは、今年2月に中国に返還された、東京・上野動物園生まれのジャイアントパンダ、シャンシャンのことだ。
シャンシャンが生まれたのは2017年6月12日。カオルさんの誕生日の翌日だった。それは、彼女が20年連れ添った夫と離婚してからちょうど1ヵ月目。さらに美容系の会社を起こして10周年の創業記念日でもあった。
「ちょうどめでたいことと心労が重なった私にとって、特別な出会いでした」