生まれたばかりの写真を見た瞬間に、心揺さぶられ、ニュースや上野動物園の発信を毎日チェック。半年後に公開日が決まったときはひたすら抽選に応募しつづけた。

「当選して初めて生シャンシャンを見たときは、感動しました。チラッと顔が見えただけですがうれしかった。すぐに上野動物園の年間パスを購入し、通常公開されるようになってからは、週に3、4回は仕事の合間に時間を見つけて会いに行って。《シャン友》もできました」

いつしかグッズも増えていた。普段使う文房具やハンカチなどの小物はすべてシャンシャン。ベッドや書棚にずらりと並ぶぬいぐるみの写真も見せてくれた。

「シャン子(カオルさんはシャンシャンを友人のようにそう呼ぶ)は、ただのパンダじゃないんです(笑)。美形というよりは性格がスペシャル。すごくセンシティブだし、ご機嫌で遊んでいるかと思うと急に暴れたり。

お母さんであるシンシンの後ろから〈膝カックン〉を仕掛けた動画を見たときは大爆笑しました。好奇心旺盛で物怖じしない。木登り好きなのに、よく落ちてもいた。そういうすべてがかわいくてたまらない」

動物園やファンがアップする写真や動画を見てから寝る日々。コロナ禍で事業が厳しい時期もあったが、いつもシャンシャンの笑顔に励まされていた。だから中国に返還されてからは寂しさが募る。

「でも彼女にとっては、今、すごくいい環境で暮らしているので、推しの幸せを考えればこれでよかったと思います。離れていても心はひとつ。まだ一般公開されていませんが、されたら中国まで会いに行くつもり」

〈推しの幸せ〉という言葉が心に残る。

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