「クコの実やナツメは料理にはもちろん、おやつ代わりにかじったりもします」(撮影:川上尚見)
いつも溌剌としているジュディ・オングさんの美と健康の源は、薬膳。ふだんの食卓に取り入れられる、シンプルなレシピを教えます(構成=山田真理 撮影=川上尚見)

<前編よりつづく

美味しく健康に

おすすめの薬膳料理として最初にご紹介したいのは、「温」の料理の代表格である「鶏酒」です。たっぷりのお酒で鶏を煮込んだ、滋味あふれる《パワー回復スープ》。

あるとき友人が「何をしても手足が冷たい」と困っていたので作ってさしあげたら、食事の途中から「食べ物でこんなに体が温まったのは初めて」と感動してくれました。病気で体力が失われているとき、季節の変わり目で元気をつけたいときにも役立ちます。

作り方は、とてもシンプル。骨からもいいエキスが出るので、丸鶏がなければ、骨つきのブツ切り肉でもOKです。

クコの実(左)は肌の老化を防ぎ、疲労回復効果もある

 

薬膳料理でおなじみのクコの実やナツメのほか、滋養強壮の効果が高い乾燥リュウガン(竜眼肉)を加えるのがわが家流。中華食材やエスニックフードを扱うお店で手に入ると思います。リュウガンがない場合は、黒砂糖で甘味を加えてください。

ナツメは消化促進、不眠症、健忘症などに効果があるとされる

 

「寒」の料理でおすすめは、豚肉とトマトの炒め物の「番茄肉絲(ファンチェロースー)」。夏の暑い時期はもちろん、暖房の効き過ぎた部屋で体が火照ったとき、高血圧が気になるときにも試してみてください。先にお肉に下味を付けるから、調理時間も短いし、しかも本当に美味しいの!

「平」の料理はアサリとメバルを使った2品をご紹介しましょう。貝や魚から出たスープは栄養たっぷりで、濃い味付けをしなくても十分に美味しいし減塩にもなります。

和食も、「温・平・寒」の食材を意識すれば、薬膳になりますね。しかも日本には四季があるから、旬のものを食べることが一番です。

「この白菊茶はナチュラルな抗生剤のようなもので、愛飲しています」

でも、いくら体にいいからといって、食べ過ぎはよくありません。中国の詩人で教育者だった劉海粟が晩年に書いた詩に「餐餐七分飽」という一節があります。美味しいものでもお腹の七分目まで食べたら満足しましょうという意味です。

食は業であり欲。もっともっとと貪らず、七分目まで来たらよしとする。そうすれば胃腸にも負担がかからず、食べたものから過不足なく栄養がとれて明日も元気でいられます。

一口一口、よく噛んで味わうことも大事。そうすると胃腸にスッと入って消化がよくなりますから。中国語で言う「縦に食べる」イメージですね。よく噛まずにワッと大食いする、「横に食べる」ことは避けたいものです。

もう1つ大切なのは、笑顔で食べること。YouTubeチャンネルの撮影でも、自分で料理を作って、自分で食べて「なんて美味しいの!」と毎回感激するから、スタッフから笑われてしまいます(笑)。

せっかく体にいい食事を作っても怒ったり不満気に食べたら味がしないでしょう。それはもったいないし、体にもよくありません。実際、私のレシピは簡単で美味しいの。ですからぜひ皆さんも作ってみて、美味しい笑顔を広げてくださいね。