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2023年度(1月~12月)に反響の大きかった記事ベスト10をお届けします。第3位は、エッセイストの碧月はるさんが自身の過去を振り返り綴った記事でした(初公開日:2023年7月13日)

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通常の家庭では、親が子どもに道徳観念や“人として”大切なことを教える。だが、中には歪んだ感情をぶつける相手に「我が子」を選ぶ親もいる。そういった場合、子どもは親に必要なあれこれを教わることができない。私の親も、まさにそれだった。
だが、そんな私に生きていく上で必要な道徳や理性、優しさや強さを教えてくれたものがある。それが、「本」という存在だった。
このエッセイは、「本」に救われながら生きてきた私=碧月はるの原体験でもあり、作家の方々への感謝状でもある

前回「酒に溺れて娘の布団に入り込む父。性虐待する父から守ってくれない母。唯一の居場所で見つけた『本』との出会い」はこちら

性虐待は、被害者側も知られるのを恐れる

親から虐待を受けている事実を、隠したがる子どもは多い。「助けてほしい」と「知られたくない」は、どちらも本当の気持ちとして被害者の心に存在する。本来、間違ったことをしているのは親の側で、被害者である子どもには何ら恥ずべきことはない。だが、親は言葉巧みに我が子に自罰感情を植え付ける。虐待を受けるのは、自分が悪いから。自分に原因があるからこんな目に遭うのだと、子どもは思い込む。

性虐待は、その最たるものだ。されている行為の意味を正確に把握できる年になると、余計に被害者は口を閉ざす。

誰かに知られるくらいなら、死んだ方がマシだ。

学生当時、私は本気でそう思っていた。だから、誰にも言わなかった。必死に「普通」を装い、どこにでもいる一般家庭の子どもかのように振る舞った。素行は真面目で、勉強は好成績。スカート丈、靴下の色、髪型。すべてにおいて、「枠」からはみ出さないよう細心の注意を払った。「家庭に問題がある」=「素行に問題がある」という方程式が、大人の世界では容易に成り立つ。その方程式を遵守している限り、私が父にされている行為が表に出ることはなかった。