(イラスト◎久保ミツロウ)
フジテレビ「久保みねヒャダこじらせナイト」の久保ミツロウ・能町みね子・ヒャダインによるおしゃべり連載「久保みねヒャダこじらせ公論」。番組ライブ終了後に楽屋で交わされる、打ち合わせなしの雑談を収録しております。 今回は2024年2月4日に開催されたこじらせライブの後のおしゃべりの後半です。前回の話題に上った「記憶のあやふやさ」について、さらに話が進んでいきます。(司会・構成◎前田隆弘

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検索しても出てこない曲がある

ヒャダ 次の「genEric genEsis」のイベントのために、1997年の隠れた名曲を調べてたんですよ。その年に出た50冊の「オリコン・ウィーク The Ichiban」を、(ユニットの相棒の)ミラッキさんと二人で必死に見ながら、知らない曲、気になった曲をネットで調べて、音源を聴いて、「これ、(有名な曲の)ジェネリックだ」みたいな作業をやってたんですけど、ネットで調べても出てこない曲があるんですよ。

久保 ええっ。

能町 うわ〜、そうなんだ。

ヒャダ 僕、検索は得意なほうなんですけど、頑張って検索しても、曲はおろか名前すらも出てこない曲があって。それだけ調べて出てこないってことは、もう世の中の藻屑として消えてるわけですよ。

能町 曲を作ったということは、ちゃんとスタジオに入って、楽器を誰かが弾いて、アレンジも誰かがやって完成させたわけですよね。そこまでしたのに……。

ヒャダ ネットには出てこなくても、メルカリを調べると3,000円とかで売られてはいるんですけど。でも買うにしてもせめて試聴くらいはしたいんですよ。ネットになんでもあると思ったら大間違いだなと思いました。

能町 私、いろんなところに文章書いてますけど、連載じゃないやつもたくさんあるんです。「どこかで頼まれて一回だけ書いた」みたいな。そういう文章がけっこうな量あるはずだから、一冊にまとめたいんですけど、どこになにをいつ書いたのか、もう自分でもわかんないんですよ。特に初期はなんにも記録してなかったので。となると、私をそこまで追ってる大ファンもいないと思うので、もう藻屑ですよね。パソコンの中にあるのはあるんだろうけど、検索しようがない。どうにかならないかなと思ってるけど、まあどうにもなんないんですよね。もったいない。

──「記憶には残ってるのに、記録にはどこにもない」という話で思い出したんですけど。小学生のとき(80年代)、日曜日に暇だったから、一人でダイエーに遊びに行ったんですよ。そしたら1階の広場で知らない女性歌手のオンステージをやってたんです。若いんだけど、アイドル路線というより歌謡曲路線みたいな人。で、何曲か歌って、最後の曲に入る前のMCで、ちょっとしんみりした語りになったんです。「次が最後の曲になります。この曲はすごく有名な作曲家の先生が私のために作ってくれた曲です。これからも私は、この曲を大事に……歌い続けていきたいと思います。それでは聞いてください…………『マルバツゲーム』!」って。

一同 (爆笑)

──もうビックリして。「えええ〜っ!?」て思ってるうちに「あなたと 私は マルバツゲーム♪」(*)って歌い出して。

*記憶から採譜しました。「レドレファ ミミレド ドドドレミドレ」

一同 (笑)

久保 それを歌い続けていくんだ(笑)。

ヒャダ それ、ロバート秋山さんみたいな曲じゃないですか!

能町 たしかに(笑)。

(2024年2月4日のこじらせライブより)

──あまりに衝撃的で、大人になっても時々「マルバツゲーム」のことが気になってて、JASRACのデータベースで調べたんです。でも出てこないんですよ。「マルバツ」を記号に変えたりして、いろいろやってみたんですけど(*)。

*出てくるのは出てくるが明らかに今世紀の曲で、80年代の曲ではない。

能町 そこまでしたんですね。歌手の名前もわからないんですよね?

──そうなんです。あまりに情報が出てこないから、自分でも「あれ現実だったんだろうか?」とも思い始めてて。

ヒャダ 僕も小さい頃、サンテレビで見た男女二人の珍演歌で「チャカポコ チャカポコチャ♪」ってやつがあって(笑)。

能町 気になる(笑)。

ヒャダ 「なんだこれ?」と思ってたんですけど、それは探したらあったんですよね。「CHAKA POKO CHA」という曲。

能町 そのまんま「CHAKA POKO CHA」なんだ。

久保 よかったですね。ちゃんと出てくるやつで。

能町 「マルバツゲーム」は気になりますねえ。どういう意味なの(笑)。

久保 その前後の歌詞がまったく想像できない。

能町 私も検索したくなっちゃうなあ。でもきっと出ないですよね。

──この曲は出てこないと思いますけど、オフィシャルの情報が消えてしまっていても、SNSで誰かの発言がヒットするというケースはわりとあると思いますね。

久保 そう思うと、やっぱりツイッター(現X)なくなってほしくないですね。

ヒャダ 検索機能としての面では非常に有用ですよね。一人でもつぶやいてる人がいたら、それが手がかりになることもありますからね。

──みんなの記憶がデータベース化されてるようなものだから。

能町 筒井康隆の「シュビドゥンドゥン」もツイッターのおかげで出てきましたから(前回参照)。

ヒャダ さっきの「genEric genEsis」で調べてた曲も、「つぶやいてる人がいた!」ということで曲が聞けたりしたので。

能町 (スマホをいじりながら)出てこないな……あなたと私はマルバツゲーム。

久保 能町さんなら見つけてくれるのではないかという気持ちになってしまう。