撮影:藤澤靖子
2024年6月10日の『徹子の部屋』に歌手の小林幸子さんが登場。紅白歌合戦での裏話や、夫婦生活について語ります。今回は、芸能生活55周年の際、これまでの活動やインターネットでの活躍、結婚のことについて語った『婦人公論』2019年3月27日号のインタビュー記事を再配信します。

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10歳でデビューを果たしてから、「おもいで酒」のヒットまで苦難の時代も経験しつつ、55年もの間歌い続けてきた小林幸子さん。演歌界では「大御所」としての地位を築きながら、いち早くインターネットの世界に飛び込み、新たなファン層を広げている

「あきらめる」は「明らかに究める」

今年、芸能生活55周年を迎えます。デビューしたのは昭和39(1964)年、東京オリンピックの年でした。来年にはまた、東京でオリンピックが開かれます。そして、昭和、平成を経て、今年は新たな時代が始まる年。一度も身体を壊すことなく、3つの時代をこうやって歌い手としてステージに立たせていただけるのは、本当に幸せなことだと思います。

55周年記念曲の第一弾「ポーカーフェイスにさよなら」は、湯川れい子先生に作詞していただいた曲です。湯川先生といえば、洋楽を日本に根付かせたことで有名な方。ちょっと意外な組み合わせでしょう?

2011年、東日本大震災後のチャリティコンサート「全音楽界による音楽会」でご一緒した時のこと。いろいろなジャンルのアーティストが参加するなか、演歌歌手は私ひとり。ほかのジャンルの音楽とは違い、私が「雪椿」を歌うと、ワンコーラスを歌い終わるごとに拍手が来る。湯川先生はその様子を見て、演歌というのは日本人の心の中にしっかり根を張っているんだと実感し、興味を持ってくださったようです。

今回、私のイメージを思い描いて書いてくださったこの曲は、まさに今の私にぴったりの、大人の歌です。愛していた男性が、ほかの人を好きになった。気がつかないふりをしてポーカーフェイスをしてきたけれど、もうけじめをつけよう。私は自分の人生を生きるから、どうぞその女性に愛をあげてください、という内容です。

恋愛に限らず、私も今までの人生で、ポーカーフェイスをしたこともあります。「それは事実と違う」と思いながら、あえて黙っていたことも。でも、潔く心を決める時期が必ず来ます。

「あきらめる」という言葉は、「明らかに究める」という意味だそうです。「しょうがない」という後ろ向きな気持ちではなく、自分の心にピシッとケジメをつける。そういう生き方は、確かに私に似ていると思います。

この曲のミュージックビデオには、純烈の4人が参加しています。脱退したメンバーが記者会見を行ったまさに翌日が収録日。先方から辞退するとの申し出があったのですが、私にはそれを受ける考えは一切なくて、予定通り撮影することにしました。撮影現場で恐縮する4人に、私はひとこと、「すべて、バネにしてくださいね」と言いました。苦労や苦しみをバネに替えると、人間、強くなります。私自身、そうでしたから。