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世間から「大丈夫?」と思われがちな生涯独身、フリーランス、40代の小林久乃さんが綴る“雑”で“脱力”系のゆるーいエッセイ。「人生、少しでもサボりたい」と常々考える小林さんの体験談の数々は、読んでいるうちに心も気持ちも軽くなるかもしれません。第33回は「ゆる敬語友達」です。

出会いは仕事

「小林さん、お久しぶりですね。うわ〜、元気にしていました?」

「元気、元気。それしか取り得ないですからねえ。Aさんは? お子さん、大きくなりました?」

「もう、高校生になるんですよ。反抗期真っ盛りで」

女性の友人が3人集まって、こんな会話からスタートする飲み会。私、Aさん、Bさんでほぼ同年代。1人は独身(私)、既婚子無し、既婚子ありの3人だ。職業は私以外、会社員の中堅クラス。一年に一回くらいのペースで会っている。

彼女たちとはコロナ以前に、私が広告制作の一部を担当した仕事を通して出会った。所属する企業は違うけれど、クライアントは同じ、年齢は近いということでよく会話をするようになった。ただ飲みに行くようになったのは、つい最近のことだ。

ただ会ってから6年以上、私たちは敬語まじりで会話を続けている。誰も崩すことはない。

仕事中はプライベートな時間を使って会うことはなかった。仕事を終えたからこそ、少しずつ歩み寄るようになった関係だ。LINEは3人の間に通じるトピックがあれば、程度。周囲から見れば多少のぎこちなさも感じられるかもしれないが、私はこの3人の関係が非常に心地よく感じている。

「ママ友……ではないんですよね。ママ友って、ただ子どもを介しているだけの関係性ですから、望んだ友情ではないんですよ」

3人で唯一の母親であるAさんは言う。愛する自分の分身=子どもを通じた関係性は、気を使うし、ビジネス的らしい。このグループ、唯一の独身の私の、ママ友に対する見解はこうだ。

「ママ友って、仕事しか知らない独身から見ると話が合わなそうだな、くらいしか思えないです……。友達じゃないのに毎日顔を合わせるのも苦痛そうだし。でも仲良いふりだけはしなきゃいけない」

「面倒ですよね」

ディンクスのBさんもうなずく。

「ただお二人と、ママ友は圧倒的に違うんですよね」

Aさんはこの3人は仕事を通して会ったけれど、自分が望んだ関係。ママ友より時間を割きたいのだという。