全員男性キャストで全編関西弁!?
新年のバタバタも一段落ついたら、芝居の楽しさを存分に味わえる舞台を観たい……。そんな方にオススメなのが、内容・キャスト・演出ともに最強の本作だ。あの『ロミオとジュリエット』を戦後の関西の港町に置き換え、恋と運命に翻弄される若いカップルと、2人を取り巻く不器用な大人たちの人間ドラマを骨太に、時に笑いも交えながら描く。
上演されるシアターコクーンは、故・蜷川幸雄が芸術監督を務めていた劇場。今回が同劇場初進出となる劇作家・演出家の鄭義信は、“オールメール(全員男性)キャスト”でシェイクスピア劇に新たな視点をもたらした蜷川にちなみ、本作でも全員男性での上演に挑む。
終戦から5年が経った、港に面した工場の町“ヴェローナ”。煙と煤(すす)に覆われた鉛色の町を不穏にしているのは、2つの愚連隊“モンタギュー”と“キャピレット”だ。モンタギューの元メンバー・ロミオ(桐山照史)は、今は更生して屋台で働いているものの、友人のマキューシオ(元木聖也)やベンヴォーリオ(橋本淳)とともに、悩みや閉塞感を抱えていた。
そんなある日、ロミオは田舎から出てきたばかりのジュリエット(柄本時生)と出会う。初めての恋に燃え上がる2人だったが、彼女は敵対するキャピレットのリーダー・ティボルト(高橋努)の妹だった。ロミオは町で診療所を営む、父親代わりのローレンス(段田安則)に相談するが、ティボルトとその内縁の妻ソフィア(八嶋智人)やキャピレットの若頭ロベルト(岡田義徳)はモンタギューを攻撃。町は大混乱に陥ってゆく。
演出の鄭は、映画『血と骨』『月はどっちに出ている』の脚本や、演劇賞を総なめにした舞台『焼肉ドラゴン』の作・演出で知られる。社会派からコメディまで柔軟に携わり、どの作品でもヒリヒリするようなリアルな展開の後に、心がじんわりと温かくなる結末が待っている。
本作でも、女役に中性的な俳優を選んでいた蜷川とは異なり、柄本や八嶋にその役を振るという、一筋縄ではいかない配役が鄭らしい。2人はもちろん、ドラマに舞台にと大役が続いている桐山や、キーパーソンを演じる岡田、舞台を引き締める段田など、見どころ満載。おおいに笑って、その後なぜだか胸がいっぱいになる、そんなひとときが過ごせそうだ。
2月8日〜3月4日/東京・Bunkamuraシアターコクーン
作・演出/鄭義信
出演/桐山照史、柄本時生、橋本淳、元木聖也、高橋努、岡田義徳、朴勝哲、みのすけ、福田転球、八嶋智人、段田安則ほか
TEL 03・3477・9999(Bunkamuraチケットセンター)
※大阪公演あり
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世界中で愛されている一人芝居が日本初上陸
7歳の時、主人公は入院したママを勇気づけるために、ステキなことやものをノートに書き出す。アイスクリーム、水鉄砲合戦、寝る前に観るテレビ、それからそれから? 彼は大人になった今も、そのノートを書き続けていて……。
2013年にイギリスで初演以来、世界中で愛され上演されている一人芝居が、いよいよ日本初上陸。鮮やかなストーリーテリングはもちろん、「客席参加型」というのも見どころだ。とはいえ、演者から番号付きのカードをもらったり、言うことが決まっていたりと、その方法はスムーズかつオシャレなのでご安心を。
主演の佐藤隆太は、普段からオープンマインドぶりに定評のある(もちろん芝居心も!)役者。彼とともにリラックスして楽しもう。
1月25日〜2月5日/東京・東京芸術劇場 シアターイースト
脚本/ダンカン・マクミラン、ジョニー・ドナヒュー
翻訳・演出/谷賢一
出演/佐藤隆太
☎0570・010・296(東京芸術劇場ボックスオフィス)
※新潟、松本、名古屋、大阪、高知公演あり
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“動く喜び”を実感するワークショップも開催
※本公演は新型コロナウィルスの影響で中止になりました
イスラエルはコンテンポラリーダンスが盛んなことで知られるが、その地で世界的なダンス・カンパニー、バットシェバ舞踊団を率いてきた振付家がオハッド・ナハリンだ。今回は、パリ・オペラ座バレエ団で踊られるなど高い評価を得ている彼の作品を直接観られる貴重な機会。
戦争や文明など現代社会の混沌をえぐりだす本作では、コンテンポラリーダンスならではの繊細かつパワフルな動きと多様な音楽で、観客のイマジネーションを刺激する。
また、ナハリン自身がケガをした際に考案した“動く喜び”を実感するためのメソッド「Gaga(ガガ)」のワークショップも開催。16歳以上ならダンス経験は不問の「ピープル」コースで、自分の身体を実感してみては。
『Venezuela─ベネズエラ』
3月13〜15日/埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
演出・振付/オハッド・ナハリン
出演/バットシェバ舞踊団
TEL 0570・064・939(SAFチケットセンター)