家事に子育て、老親の介護……時間も労力も、家族に吸い取られていく毎日。「このままではいられない!」と意を決して行動を起こした女性たちは、目の前のハードルをどう乗り越えたのでしょうか。定年退職した夫の暴君ぶりに辟易していたアケミさん(仮名)は、あるニュースがきっかけで、一念発起することに――。
「隣の県まで行っていたんですか?」
昨年定年退職した夫と、四六時中顔を突き合わせなければならない状況に辟易しているのが、専業主婦のアケミさん(60歳)だ。
「うちの夫は、言葉がキツいんです。私が主婦向けの情報番組を見ていれば、『くだらないものを見やがって』。廊下でぶつかりそうになると、『間の悪い奴だな』。言い返せば100倍になって返ってくるだろうから黙って聞き流すものの、内心腹は立つし、悲しいし」
何よりおっくうなのが、昼食作りだ。娘が独立してから、夫が会社へ行っている間は自分ひとり残り物で済ませばよかったのに、定年後は毎日、きちんとしたものを用意しないといけない。
しかも、その時々で夫が食べたいものをすぐ出さないと機嫌を損ねるため、食材のストックにも気を使う。ラーメンのスープひとつとっても、何種類もの味を揃えておく必要があるのだ。
「当然、日々の買い物に時間がかかるんですけど、帰宅が少しでも遅くなると『隣の県まで行っていたんですか?』と、嫌みを言う。一度、夫が希望するものを作れなかったら、『35年働いて退職金もがっぽりもらったのに、昼飯に好きなものも食べられないなんて』。家計を夫に頼りきりで引け目を感じている私にとって、一番言われたくないセリフをぶつけてくるんです。それが悔しくって……」