市村正親さん
(撮影:小林ばく)
舞台、映画、ドラマにと幅広く活躍中のミュージカル俳優・市村正親さん。私生活では2人の息子の父親でもある市村さんが、日々感じていることや思い出を綴る、『婦人公論』の新連載「市村正親のライフ・イズ・ビューティフル!」。第6回は「76歳の新ミッション」です。(構成:大内弓子 撮影:小林ばく)

「怪人だからです!」

1月28日に誕生日を迎えて、76歳になりました。70歳で亡くなった親父の年齢を6つも超えたんだな……と感慨深いです。でも、87歳まで生きた母ちゃんにはまだまだ及ばない。母ちゃんも超えてやるぞと思っています。

誕生日当日は、主演を務めたミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』の舞台上でお祝いしてもらい、真紅の薔薇を76本いただいた。76本はやっぱり重かったね。ファンの方からは、ファントムをかたどったケーキもいただいて。舞台では、感謝を込めてこんなスピーチをしました。

「最近SNSで、市村さんはあの年齢でどうしてあんなにパワーがあるんだというコメントをよく見ます。その答えはひとつ。怪人だからです!」

本当は76歳で、ずっと若いファントム役をやっちゃいけないと思う。でも、『オペラ座の怪人』で日本最初のファントムを演じた、僕の運命なんだろうね。

ファントムになるためには、専用の発声訓練があるんだよ。キーが高く裏声を使うため、ほかの作品とは発声を変える必要があるの。

今回も本番の1ヵ月半前――『モーツァルト!』博多座公演千秋楽の6日後には、Billy 先生の稽古を受けていた。彼はいろいろなミュージカル作品の音楽監督をやっていて、僕は初演の『ミス・サイゴン』のときから33年の付き合い。

Billy 先生がいれば必ずできるようになる。僕にとって守り神のような、特別な音楽の先生なんです。